効果が実感できる改善活動(1)
「確実に成果につなげる工数削減!」

エデュース
川島 康史

「改善前と比べて○○%のコスト削減ができます。」「リードタイムが△△%短縮できます。」
製造現場から、改善結果が報告されると、一体どれだけの効果が数字に表れるのだろう、とワクワクします。
しかし、決算の数字を見て、「あれだけ効果があると言っていたのに、思ったほど数字(利益)に表れない…。なぜ?」と感じたことはないでしょうか?
実は改善効果には、いくつかのカラクリがあります。今回は、“工数削減”に関わる問題を考えてみます。

1、工数削減とは

そもそも工数とは作業量を意味するもので、【作業する人数】×【作業にかかる時間】であらわされます。実際はこの工数にチャージ〈企業によって算出ルールは様々ですが、ライン別や製品別に配賦された人件費+減価償却費を使用する事が多い〉をかけ合わせて、原価算定に使用されるため、工数=コストとイメージされます。
この考え方を工場内のあらゆる作業にも応用し、改善活動での工数削減効果も金額で捉えられます。
しかし、ここに注意しなければいけないことが隠されています。

2、「“工数削減”結果を何に活かすか」が大切

工数削減には様々なケースが考えられます。
(1)今まで3人でやっていた組立作業を、冶具を使うことで2人作業にした。
(2)1つひとつ梱包されていた部品を、20個づつ剥き出しで通箱にて納めてもらい、開梱工数を無くした。
(3)ノギスでの測定検査を実施していた製品を、検査冶具によって工数を削減した。
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挙げればきりがありませんが、これらは工数削減の事例として、よくあるものばかりです。
例えば、削減した工数にチャージをかけ合わせて計算すると、年間50万円の効果が見込まれる、とします。では、本当にこれだけの効果は必ず出せるのでしょうか?
答えは、NOです。
工数削減によって見積もられた効果金額は、“製品原価を下げる”、という意味では額面通りの効果が得られます。しかし、一定期間に会社が支払う実質的な金額が減るわけではありません。実際の現場では、工数削減によって作業時間が減ったから、「あなたは今日から7時間勤務です」というわけにはいかないからです。
以前のように、ロットサイズが大きかったり、毎日のように残業で現場がフル稼働している時には、取り立てて削減した工数の活用など考えなくても、次から次と仕事をこなすことが、自然に生産性の向上に繋がりました。
しかし、今の現場は扱う品種が増え、段取り時間が増えたため、多少の削減効果は、何の経営効果ももたらさないまま霧消します。
工数削減への取り組みは、削減した分をどのように活かすか、をしっかりと考えなければならないのです。

3、工数削減のすすめ方

〈ステップ1…実態把握〉
工数削減に取り組む際には、まず現場の実態を把握します。作業の内容や複雑さに応じて“工程分析表”や“流れ線図”、“業務フローチャート”などを用意すると、作業の全体像がつかみ易くなります。実際の現場では、普段の仕事を通じて、おおよその見当がついている場合もありますが、次の事項をチェックします。
(1)作業の流れはどうなっているか
(2)かかっている時間はどれだけか
(3)何人で作業をしているか
(4)価値を生まない作業や、二度手間になっている作業はないか

〈ステップ2…目標設定〉
実態が把握出来れば、目標値を設定します。大事な事は、「○○%削減する」、とか「○○人・時削減する」といった目標だけでなく、工数削減の具体策を決めておくことです。
例えば、
(1)A作業者には、○○部材の運搬も担当してもらう。
(2)B作業者は、もう一台機械を担当する。
(3)B工程の作業が簡素化出来れば、パート作業者に担当替えする。
(4)マネジメントについては、朝一番に今日の生産予定量を確認し、終了時には実績を確認する。

〈ステップ3…効果確認〉
「効果が得られたはずだ。」と、中途半端な計算上の確認で終わってしまってはいけません。
確実に効果を上げるためにも、実態をしっかり確認して下さい。
(1)実際の現場へ足を運び、自分の目で確かめる。
(2)現場作業者から話を聞き、実施後に思わぬ問題が発生していないか確かめる。
工数削減は、次の2つの狙いがあります。
■少しでも楽に、少しでも早く作業ができるようにすること。
■少しでもコストをかけず作業が出来るようにすること。
作業を、楽に、早く出来るようにするだけでも、その積み重ねが現場のノウハウになり、企業が生み出す付加価値となります。
しかし、○○円のコスト削減になる、と言っておきながら、日々の仕事に流される現場で、削減したコストがもみ消されてしまうようでは、“もったいない”としか言いようがありません。
最後の最後までしっかり詰めて、改善効果が実感できる現場にしてください。

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