「ヤルべき最重要課題はトップ自らが、」

株式会社エデュース
代表 原 清


今年も300名を越える新入社員の研修を担当した。私共が担当する研修は、経営トップがしっかりとした価値観をもち、その理念を研修の柱にできる場合に限られる。
組織運用の原則は、「経営組織は目的達成のための手段であり、組織が果たすべき機能は『経営トップに代わって仕事をしている』ことが大前提」に在る。たとえば、「企業は人だ」と言いながら、トップ自らが会社説明会に出て、自らの理念、ビジョン、夢、そして現状を、自らの熱い言葉で語っているだろうか。本当に信頼できる人が採用人材の目利きを担当しているだろうか。
新興企業のトップは一般的に若い。経営する会社のブランド力は無く、勿論、知名度も低い。だから、できる人材、活力溢れるブレーンを求めて、腰軽く、自らが求職者に語る人が多い。頼るものが無ければ、自分の熱い心と言葉、エネルギーしかない。
一昔前、求人難の時に採用した人達は、10数年来の厳しい経営環境下においても、やはり甘いまま。
必要人員数を確保するためにと、妥協してはならない。採用人材のレベルは落とさず、採用時、採用後も妥協してはならない。
求人代行会社を使う会社も少なくない。求人用冊子の編集を丸投げして、求人代行会社や印刷会社に任せる会社も多い。高い料金を払うだけあって美しい理念を掲げ、現実離れした歯の浮くような言葉でお化粧した冊子。人材確保を他人まかせにしてどうする!
若者は、一見して美しく見える言葉の字面に魅かれるが、現実のビジネスは甘くない。「食べるためのお金を稼ぐこと」が甘かろうはずがないことを、夢を語ると同時に教えておかなければ、入社3ヶ月、6sヶ月の離職では、あまりにももったいない。
パート・アルバイト、派遣社員の比率が高まれば、絶対的な少数派である正社員はよほどしっかりしていないと、圧倒的多数を占める人のレベル意識に堕ちていくのが自然の理。ましてや、新入社員が一番身近に接するのは、絶対多数である非正社員。
正社員のモラールアップには、何がキーポイントか。仕事のプロであり、その上に、チームで仕事をするからこそ、組織へのロイヤリティー(仕事や組織への帰属意識)を堂々と求めるべきである。それに応えうるのは、意識レベルの高さを求めるに足りる人材の資質を高めるための、徹底した教育である。できる人材を求め、レベルアップをするために、募集と教育の場面でトップ自身が出ていくぐらいの熱い思いをもたねばならない。

 

目次へ I 前の頁 I 次の頁