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【"CABARET" 観劇記 in N.Y.】

STUDIO 54の前です!
CABARET
AUG 12(WED),1999 STUDIO 54 8:00PM

「CABARET」

このSTUDIO54って、アンディ・ウォーホールたちがよく通っていた、サブ・カルチャーの聖地のような存在だったあのSTUDIO54なのでしょうかね? ともかく、前の劇場が事故で使えなくなってこのSTUDIO54に移ってきた「キャバレー」、1階は本当にキャバレーそのもの。(といって もキャバレーなる場所に出入りしたことはないので、想像の範囲ですが)こじんまりしたステージと1階席の床の高さはほとんど同じで、レストランのようにテーブルと椅子が並んでおり、お酒・食事を楽しみながら観劇できます! 後ろのほうはゆったり腰掛けられるソファのような椅子になっていたり(私はこのソファの席)、少し高めのカウンター&スツールタイプになっていたりして、めちゃくちゃ洒落ております。私は一人で「か、かっこよすぎるよ、ココ・・・」とつぶやきそうになりながら、せっかくだから(?)と、ジントニックを客席後部のバーで購入し席につきました(1階はウェイトレスさんが適宜来てくれますので着席のままでいろいろ注文可能)。ただし! 2階は普通の劇場と同じ。この演目は是非1階で、自分も作品中のキャバレーにいるような気分で見て頂きたいっ!
「キャバレー」のボブ・フォッシー監督映画版は残念ながらまだ見てないし、もちろんハロルド・プリンスによる舞台版も知らないので、このサム・メンデスによるリバイバル 版が全くの初見。
物語はナチスが台頭しはじめた頃のベルリン(だから、登場人物のほとんどがドイツ語訛りの英語を話すのね。このほうが聞き取りやすかったりする)。世の中も、人々の気分も退廃気味で、少し暗い影が時代に落ちつつある。しかし、キャバレー「Kit Kat Club」の中だけは別世界。我らが案内役、Emceeに導かれて、夜毎楽しくも妖しいショウが繰り広げられる。このベルリンに一人のアメリカ人小説家がやってくるところからお話は展開していきます。このアメリカ人 (Bradshaw)が、「Kit Kat Club」の大スター、 Sallyとの恋に落ちる。Bradshowの下宿先の大家のおばさんと、ユダヤ人のおじさんカップルの恋も花咲く。1幕はこの2組の恋物語に、「Kit Kat Club」での、なんとも妖艶・エロチック・華麗かつシックなショウが絡まりあい(いやほんと、お子様は見てはいけないようなダンスもあり!)まさに「めくるめく」感じ。しかし、1幕のラストでは、不幸を予感させるような暗示が。2幕になると、2組の恋人たちの思いはすれ違い始めたり、政治の動きにまきこまれていったりして、悲しい展開となっていく。そして最後には決定的な時代の流れが、恋人達だけでなく、ベルリンを、ドイツをつき動かしていくのだと思い知らされる・・・。
登場人物達はみな個性的(すぎる!)、各ナンバーも素晴らしいし、Kit Kut Clubのバンドのメンバーの演奏も、ダンサーたちもみなハイレベルで、おいしいお酒に酔ったようにあっという間に時間が過ぎていっちゃった。驚いたのは舞台装置。舞台は小さいし、まさに「キャバレー」状態なので装置を置く袖もないのに、暗転の度に、あるときは汽車の客室、あるときはキャバレーの華やかな舞台、あるときはアパートの一室と趣を変えてしまう! ちょっとしたテーブルや椅子の使い方なんだけどね。そして舞台そのものは「2階構造」になっていて、2階部分にはバンドが。物語本体と、そして物語の中のショウ の両方を進行させるEmceeは、この2階部分や客席を縦横無尽に動いて 場面転換毎にメリハリをつけてくれます。 見る前は「シカゴ」と似ているのかなあ、と想像していたのですが全 く違いますね。確かにシンプルな衣装や振り付け、バンドが舞台上に いる演出など似ている部分もありますが、人間模様や政治への皮肉 などがずっと繊細に描き込まれているように感じられました。 さて、キャストについて少し。まずEmcee役のMichael Hall!!!! おそらく皆さん、この新演出の「キャバレー」といえば自動的にTONY WINNERのAlan Cummingを思い出されると思うのですが、Alanのあとを 受けてEmcee役を射止めたMichealも格好良かった〜!といっても私は Alanについてはトニー賞授賞式の放映で少し見ただけなのですが。 Alanに妖しさでは負けていませんし、あの逞しい体でのダンスは迫力 も色気も満点。舞台のどこにいてもオーラを放っていました。客席に 下りてくる場面が多いのですがコートの端が私の足にヒラリと触れた だけでドキドキしてしまいしたわ・・・。Emceeは一歩間違うとただの 「キワモノ」になってしまうと思うのですが、Michealは確実な演技力 でこの作品の世界と我々観客との橋渡しをしてくれました。 続いてはSally Bowles役のSusan Egan! そう、「美女と野獣」の ベルです。このSallyという役はとっても難しい(かわいいんだけど 憎たらしくて、天使のようだと思えば小悪魔のようで、ちょっと頭が 弱いのかと思うと賢くて・・・)と思うのですが、素晴らしいSally でした! 舞台上でとても輝いていたし、最後の熱唱は感動的で涙 が出てきました。  脇を固める役者さんやアンサンブルも皆さんとっても良かったです。 特にKit Kat Clubのバンドのメンバーは、演奏するだけじゃなくて ダンスも披露するんです。女性はみなセクシーだし、あの歌って踊っ て楽器の演奏もできる面々はどういう人たちなんだろう?! 「ラ・アルプ」9月号の安倍氏のエッセイでは、このリバイバル版の 「キャバレー」(いや、安倍氏に倣えば「キャバレエ」)はイマイチ 評価されていないようでしたが、なんのなんの、ニューヨークの最後 の夜を飾るにふさわしい最高の舞台でした。もし近くに住んでいたら 絶対、通いつめちゃうっ!  さて、この「キャバレー」、日本でも東宝が上演したことがあったと 思うのですが(ちがうかな?)、ご覧になった方やキャストをご存知 の方、どんなふうだったのか教えていただけないでしょうか〜? もし今このリバイバル版を日本人キャストで上演するなんて事になっ たら、Emceeは市村正親さんか・・・いや、岡幸二郎さんかな〜。


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