●Still life−静物は沈黙を容認しない2024

 

※各作品写真は、近日アップする予定です。

 

 ■展覧会趣旨 [Purpose of Exhibition]

古代ローマ時代の壁画から起源をもつといわれている静物画は、西洋絵画の歴史の中で装飾的、宗教的な要求を経て、高度な写実から後の印象派やキュビズムといった絵画空間への分析を深める対象へと発展してきました。静物を対象とした作品は絵画に留まらず、写真や立体、現在ではPOV-Ray等レイトレーシングソフト等をつかったデジタルアートまで幅を拡げています。現実と虚構、豊かさと儚さ、光と影が交錯する静物画は、混乱と不透明さが増す現代において私たちの眼になにを映し出すでしょうか。本展は静物を直截的に描写したものから、物の佇まいより気配を感受し体現を試みたもの、モチーフの形状や細部等を捉えながら作家の執着性が差し込まれた作品等、様々な観点から着手された静物画をご紹介します。

OギャラリーeyesO Gallery co.,ltd.

 ■大田原桜子 Sakurako Ohtawara

Drawing

15.0×15.0cm 紙にインクジェットプリント 2024

みなも

65.2×65.2cm カンヴァスに油性マーカー、油絵具 2024

 

 ■大田原桜子 コメント  [Artist Statement]

静物画と聞いて最初に浮かんだのはジョルジョ・モランディの作品でした。初めて見たとき、画面の凄まじいエネルギーに驚き、それまで持っていた静物画への「静寂」のイメージが完全に壊されたのを覚えています。

今回、身の回りのものを白い布で覆い、その上からビニールひもで縛って形を作ったものを起点としています。自分の手で作ったモチーフへの執着が、静かな表層の内側で蠢いているような感覚の中で描きました。

 ■略歴  [Artist Biography]

1991年、兵庫県生まれ。2017年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画を修了。2016年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催(以降、同ギャラリーにて毎年個展を開催)。同年、京都市立芸術大学小ギャラリー(京都)にて個展を開催。主なグループ展に、2014年、CAUSE ON THE SURFACE 4Oギャラリーeyes・大阪)。2017年、Drawing-Exposed essence 2017「ガ○ダム」を描く(Oギャラリーeyes・大阪)。2019年、新・輝いて麗しの油絵具(Oギャラリーeyes・大阪)。2020年、Restriction2020OOO計画(Oギャラリーeyes・大阪)。2022年、ドラッグ&ドロップ2022Oギャラリーeyes・大阪)、Duo シリーズT(Oギャラリー・東京)等に出品。

 ■大野浩志 Hiroshi Ohno

台の上の五つの石

h21.0×w61.0×d26.5cm 陶、パーティクルボードに塩基性染料で彩色 2023

 

 ■大野浩志 コメント  [Artist Statement]

「静物画」をテーマとした本展で、私は素焼の陶片を彩色して五つの自然石をリアルに表現した。また、それらの石を載せて展示するための台座が必要となり、パーティクルボードのフラットな表面に木目を描いて古い板材に見せかけ、棚板を作った。今回はその棚板の上に私が描いた五つの石を並べて「静物画」として提示した。この私の作品解説を読む前に作品と対峙した観者がどのように受け止めるのか興味のあるところである。

 ■略歴  [Artist Biography]

1961年、大阪府生まれ。1984年、大阪芸術大学芸術学部工芸学科を卒業。1985年、不二画廊(大阪)にて初個展を開催。以降、大阪府立現代美術センター(大阪)、信濃橋画廊(大阪)、MAT(名古屋)、NCAF'93(名古屋市民ギャラリー・名古屋)、CUBIC GALLERY(大阪)、ソフトマシーン美術館(香川)、CAS(大阪)、Oギャラリーeyes(大阪)Ami-Kanoko(大阪)等で個展を開催。主なグループ展に、1987年、第4 回釜山ビエンナーレ(釜山/韓国)。1990年、いま絵画は OSAKA'90(大阪府立現代美術センター・大阪)。1992 年、アート・ナウ'92(兵庫県立近代美術館・神戸)。1993年、大野浩志・丸山直文 2 人展(MAT・名古屋)。1994年、時間/美術(滋賀県立近代美術館・滋賀)。1996年、NCAF '96(名古屋市民ギャラリー・名古屋)。2012年、コレクション Vol.1(ソフトマシーン美術館・香川)。2015年、コレクション Vol.2(ソフトマシーン美術館・香川)2017年、日韓交流展「モノと精神」(海岸通ギャラリー・CASO・大阪)2018年、日韓交流展「個体―液体の臨界点はまだ発見されていない」(Space Willing N Dealing・ソウル)。2021年、Play back−微笑みのあと(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■日下部一司 Kazushi Kusakabe

隙間を塗

h13.3×w7.0×d7.5cm 石膏、胡粉ジェッソ 2024

斜に見る

h30.0×w47.0×d8.5cm パネルに綿布、和紙にシルクスクリーン 2024

 

 ■日下部一司 コメント  [Artist Statement]

机の上の水差しは単なる「水差し」だ。机上に置かれた物品を「静物」と認識するには観念的な視点が必要である。そこにあるそれをどのように解釈するか、おそらくそういう問題について静物画は問うのだ。静物は生活空間の中にあるが、静物絵画の空間は平面の中にある。いや概念の中にあるのかもしれない。

我々にとって空気のあるところが空間だということにしよう。しかし、金魚にとっての空間は水だ。ミミズにとっての空間は柔らかい土なのだろう。

 ■略歴  [Artist Biography]

 1953 年、岐阜県生まれ。1976 年、大阪芸術大学芸術学部美術学科版画専攻卒業。1975 年、ギャラリー射手座(京都)にて初個展を開催。以降、信濃橋画廊(大阪)、シティギャラリー(神戸)、ギャラリーココ(京都)、ウエストベスギャラリー・コヅカ(名古屋)、SAI GALLERY (大阪)、The Third Gallery Aya(大阪)、O ギャラリーeyes(大阪)、伊丹市立工芸センター(兵庫)、京都造形芸術大学芸術館(京都)、ギャラリーヤマグチクンストバウ(大阪)、Marie Gallery(東京)、ギャラリーすずき(京都)、MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w(京都)、美濃加茂市民ミュージアム(岐阜)等で個展を開催。その他、京都市美術館(京都)、東京都美術館(東京)、ブラッドフォード美術館(イギリス)、リュブリアナ美術館(旧ユーゴスラビア)、兵庫県立美術館(神戸)、大阪府立現代美術センター(大阪)、岐阜県美術館(岐阜)、ウオーカーヒルアートセンター(韓国)、姫路市立美術館(兵庫)、ドイツ文化センター(ドイツ)、中之島デザインミュージアム(大阪)、京都市文化博物館(京都)、大阪府立江之子島文化芸術創造センター(大阪)、徳島県立近代美術館ギャラリー(徳島)、芦屋市谷崎潤一郎記念館(兵庫)等、国内外の美術館、その他ギャラリーで開催されたグループ展等、多数出品。

 ■城 愛音 Aine Jo

午後15

65.2×91.0cm カンヴァスに油彩、アクリル絵具 2024

午後15時 ドローイング

50.0×60.6cm 紙にアクリル絵具、水彩、パステル、他 2024

 

 ■城 愛音 コメント  [Artist Statement]

普段から、自身の身近な人物や場所を基に作品を描いている。今回、モチーフは見慣れてしまい気に留めることのないものに焦点を当てることにした。

昼下がりの午後、木漏れ日が室内に射し込む。一日のうち僅か数十分ほど、剪定された木々が障子越しに切り絵のように映し出される。そんな様子と、雑多な生活用品が対照的で、どことなくここに住む“人物”という面影を感じ取れる。

それらを筆致で辿るには、まだまだ手探りな部分はあるが、不在による“人”へのアプローチの視点が見えてきたようだ。

 ■略歴  [Artist Biography]

1994年、大阪府生まれ。2019年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画を修了。2017年、同時代ギャラリー(京都)にて初個展を開催。以降、芝田町画廊(大阪)、同時代ギャラリー shop college(京都)、TAKU SOMETANI GALLERY(東京)、ギャラリー恵風(京都)、同時代ギャラリーBis(京都)、Oギャラリーeyes(大阪)にて個展を開催。主なグループ展に、2019年、Kyoto Art for Tomorrow 2019−京都府新鋭選抜展−(京都文化博物館・京都)。2020年、VOCA2020 現代美術の展望−新しい平面の作家たち(上野の森美術館・東京)、ゲシュタルトの祈り(2kw gallery・滋賀)、The extracted element 2020Oギャラリー・東京)。2021年、身近な存在(庵町家ステイおく材木町町家・京都)、遮りの景象−ソノムコウヘ(Oギャラリーeyes・大阪)。under/over MASK ANONYMAT vol.4 (Gallery OUT of PLACE・奈良)Movement-Vol.1Artglorieux GALLERY OF TOKYO・東京)、ART SESSION SUMMER by 銀座 蔦屋書店(銀座蔦屋書店内・東京)等に出品。

 ■俵 萌子 Moeko Tawara

寝室のライト

60.6×50.0cm カンヴァスに油彩 2024

窓辺に置かれた花瓶

50.0×60.6cm カンヴァスに油彩 2024

 

 ■俵 萌子 コメント  [Artist Statement]

静物画を描くとなった時、なるべく光が主役たり得るようなモチーフを選ぼうと決めました。対象物を見つめながらも結局自分が描きたいのはそれを照らし出している光そのものであると思ったからです。

光を描くことは目に見えない存在に対する憧れや畏怖の念をより色濃く意識させます。そして描いていて改めて、崇高さとは(光源が何であるかにかかわらず)光そのものが持つ性質なのだなということに気づかされました。絵画だけにとどまらず、光を表現したいという人間の欲求は普遍的でありその行為そのものに神秘的な魅力があると感じています。

 ■略歴  [Artist Biography]

1978年、静岡県生まれ。2001年、大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コースを卒業。2005年、Gallery H.O.T(大阪)にて初個展を開催。以降、Oギャラリーeyes(大阪)、Oギャラリー(東京)、ギャラリーαM(東京)、GALLERY HASHIMOTO(東京)にて個展を開催。主なグループ展に、2005年、シェル美術賞展(代官山ヒルサイドフォーラム・東京)にて「尾崎信一郎審査員賞」を受賞。2006年、エラン(Oギャラリーeyes・大阪)。2007年、DrawingExposed essence 07Oギャラリーeyes・大阪)。2008年、VOCA2008 現代美術の展望 −新しい平面の作家たち−(上野の森美術館・東京)。2009年、Absolute basis 俵萌子と細田聡子の場合(Oギャラリーeyes・大阪)。2010年、トーキョーワンダーウォール公募2010(東京都現代美術館・東京)。2013年、FACE 2013損保ジャパン美術賞展(損保ジャパン東郷青児美術館・東京)。2016年、俵萌子とENK DE KRAMEROギャラリーeyes・大阪)、絵の旅(MA2 Gallery・東京)。2018年、輝いて麗しの油絵具(Oギャラリーeyes・大阪)。2019年、The 20th Anniversary Exhibition 「続・絵画劇場」(Oギャラリーeyes・大阪)、Small InfinityMA2 Gallery・東京)。2021年、Absolute basis 俵萌子と松田豊美の場合(Oギャラリーeyes・大阪)、Winter's Tale−美しい絵(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■中小路萌美 Moemi Nakakoji

とっぽぽ

45.5×53.0cm カンヴァスに油彩 2024

 

 ■中小路萌美 コメント  [Artist Statement]

静物はほとんど描いたことがありません。

動きのない限られたモチーフと狭い空間は余白があまりないように感じます。

また触覚でも実感してしまっている身近なものはよりイメージが作り上がっている為、 改めて見ているものが本当に正しいか疑うことは非常に難しい作業です。

その為か、いつもより色が重要になった気がしました。

重ねる色と残る色、下に落ちる色。その置き方、厚さ、薄さ。

余白がないからこそ慎重に、どのように空間を作れるのか探っていたのかもしれません。

 ■略歴  [Artist Biography]

1988年、兵庫県生まれ。2013年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士前期課程油画版画領域を修了。2012年、GALLERY SUZUKI(京都)にて初個展を開催。以降、スルガ台画廊(東京)、文化フォーラム春日井(愛知)、gallery N(愛知)、Oギャラリーeyes(大阪)、Oギャラリー(東京)、数寄和(東京)にて個展を開催。主なグループ展に、2012年、清須市第7回はるひ絵画トリエンナーレ(清須市はるひ美術館・愛知)。2013年、トーキョーワンダーウォール公募2013入選作品展(東京都現代美術館・東京)。2014年、KUAD graduates under30 selectedGalerie Aube・京都)。2017年、シェル美術賞展2017(国立新美術館・東京)。2020年、sanwacompany Art Award/Art in TheHouse 2020(サンワカンパニー東京ショールーム・東京)。2021年、SICF×Spiral Online Store -view-(スパイラルエスプラナード・東京)、Pictorially yours,(表参道画廊・東京)、REAL by ArtSticker Shanghai - 未来可期的日本新锐艺术-(上海梅龍鎮伊勢丹・中国)。2022年、『Spinout Hours〜失われた2時間〜』The Chain Museum×中小路萌美(NEWoMan横浜・神奈川)。2023年、シェイプ!(Bunkamura gallery 8/・東京)等に出品。

 ■渡辺信明 Nobuaki Watanabe

ribbon/私の中のピカソ

60.6×72.7cm カンヴァスに油彩、アクリル絵具 2024

Ribbon

41.0×31.8cm カンヴァスに油彩、アクリル絵具 2024

 

 ■渡辺信明 コメント  [Artist Statement]

ピカソの「頭蓋骨のある静物」(大原美術館)。初めて観たのは私がまだ高校生の頃だったと思う。まるで黒いリボンで一気に結ばれたかのような画面は、それまで私が持っていた静物画のイメージをはるかに逸脱し、周囲の作品ともまったく響き合わない圧倒的な気配を放っていた。今回、そのリボンを解かずに「図」ではなく「地」となる空間を思い切って攻めることで、ある種の反転をもくろむ。それはまぎれもなくピカソへの憧れと抵抗である。

 ■略歴  [Artist Biography]

 1962年、滋賀県生まれ。1988年、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。ギャラリー16(京都)にて初個展を開催。以降、ギャラリーすずき(京都)、ギャラリー白(大阪)、複眼ギャラリー(大阪)、ギャルリ・プス(東京)、テンバ・Aギャラリー(大阪)、2kwギャラリー(滋賀)等で個展を開催。主なグループ展に、1991年、現代美術 '91−素材はいろいろ−(徳島県立近代美術館・徳島)、次代を担う作家展(京都府立文化芸術会館・京都)にて「優秀賞」を受賞。1992年、筆跡の誘惑−モネ、栖鳳から現代まで−(京都市美術館・京都)。 1994年、アート・ナウ'94−啓示と持続−(兵庫県立近代美術館・兵庫)。1996年、VOCA'96(上野の森美術館・東京)。1999年、風の芸術展(枕崎市文化資料センター・鹿児島)にて「準大賞」を受賞。2001年、京展(京都市美術館・京都)にて「京展賞」と「京都市美術館賞」(コレクション賞)を受賞。2003年、吉原治良賞展(大阪府立現代美術センター・大阪)にて「優秀賞」を受賞。2006年、京都市芸術新人賞受賞。2007年、“ダイアローグ”コレクション活用術vol.2(滋賀県立近代美術館)。2015年、Enk dekramer と渡辺信明(Oギャラリー eyes・大阪)。2023年、ペインタリネス(ギャラリー白・大阪)等、多数出品。

 

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