西村みはる Miharu Nishimura

 

晴れ渡った陽気な空

60.5×50.5cm カンヴァスに油彩 2022

すべてが収まるひと時

27.5×22.0cm カンヴァスに油彩 2022

時の引っ掛かり

31.8×41.0cm カンヴァスに油彩 2023

涼しげな海の泡の緑

65.0×80.5cm カンヴァスに油彩 2022

目を閉じて匂いを想像してみると

65.0×53.0cm カンヴァスに油彩 2023

心のなかの風通しのよい場所

45.8×53.0cm カンヴァスに油彩 2023

誰もが…

45.5×45.5cm カンヴァスに油彩 2022

置かれた場所で心をさまよわせる

50.0×66.0cm カンヴァスに油彩 2022

水がやさしく草をなでる音が聞こえてくるよう

60.5×60.5cm カンヴァスに油彩 2022

しゃぼん玉。われた空

15.0×10.5cm 和紙に木炭・オイルスティック 2023

その組み合わせ

32.0×50.5cm 和紙に木炭・オイルスティック 2023

束の間

32.0×50.5cm 和紙に木炭・オイルスティック 2023

 

 ■展覧会テキスト[Text]

西村みはるの作品には、着色されていない部分が多い。一般的に余白といわれるところだが、西村の作品では空間と呼ぶのがふさわしい。しかも、画面にイリュージョンとして生成される空間ではなく、西村自身が生きている実空間と地続きの空間である。画面上の空間には何も見えないが、西村の身辺にある自然や季節、時の流れ、家庭のひとコマ、そしてその時々の自身の内面そのものがそこには確かに存在している。西村は色を置くことで、白い画面に見たものを繋ぎ止め、可視化する。

テーマは、自分自身と自身を取り巻く環境との関係にあるといってよいだろう。それを、初めのうちは観念的あるいは心象的な表現で描き出そうとしていたようである。その後、写真による作品を制作したことをきっかけに、西村が生きている実空間と画面の余白が繋がった。これが大きい。繋がったことで、自身と自身を取り巻く環境とにあった関係を、白い画面に見ることが可能になったといえる。

作品には、色面を用いたペインティング作品と描線を主としたドローイング作品がある。ペインティング作品の色面には、絵の具に網目状のテクスチャーが施されており、物質性が強調されている。“もの”というフィルターを通して画面に 間(ま)と緊張感をもたらすという手法は、学生時代に出会ったという 〈もの派〉に通じるところがある。ドローイング作品に見られる動きのある描線は、時間を捉えようとする軌跡といえるだろう。ここでは、関係を描いているとも、空間を探っているともいえるが、 間(ま)を明らかにしようとしている点で、描かれた線はペインティングにおける色面と同様である。

近年のコロナ禍の下での作品には、これまでの色遣いとは印象の異なる薄紫の流動的な色面が現れた。これについて西村は、コロナ禍の追いつかなければならない変化の中で「居場所を求める中『不安と調和』が形体や色の変化につながっています」といい、色の選択に関して「自分のまわりにある環境で変化していくのだと思い使ってみようと思いました」といっている。新作でもかつて買ったきり絵の具箱の中で眠っていた色を使ったという(2023126日付筆者宛メール)。これまで確かだった実空間が揺らぐなか、今後、西村がどのように今を繋ぎ止めていくのか、興味深いところである。

安達一樹(徳島県立近代美術館)

 

 ■西村みはる コメント  [Artist Statement]

殻の中に閉じこもっている生活

振り返っても思い出せない

 

あたり前だった事も忘れそうになる中

解き放たれる瞬間を待ちわびる日々

 

社会不安の時代において

楽しさ、喜び、秩序

 

移り変わりの速い今の世の中

自分を取り戻せそうな彩りをと。

そして、豊かな彩りを見つけた時

同じものを見、同じ感覚を覚え

降り注ぎ、流れ、浸透し、再び現れる。

 

消える思いや増える思い

 

コミュニティや文化の中で

個々の違いを超えて共有されるのだと

 

再び感じる。

やはりどこかでつながっているのだと。

 ■略歴  [Artist Biography]

1974 大阪府生まれ

1997 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業

 

・個展

2000 Oギャラリーeyes(大阪)

2001 Oギャラリーeyes(大阪)

2002 OギャラリーUPS(東京)

2002 Oギャラリーeyes(大阪)

2003 アートスペース虹(京都)

2003 Oギャラリーeyes(大阪)

2004 Oギャラリーeyes(大阪)

2006 Oギャラリーeyes(大阪)

2007 Oギャラリーeyes(大阪)

2008 Oギャラリーeyes(大阪)

2009 Oギャラリーeyes(大阪)

2010 Oギャラリーeyes(大阪)

2011 Oギャラリーeyes(大阪)

2013 Oギャラリーeyes(大阪)

2016 Oギャラリーeyes(大阪)

2018 Oギャラリーeyes(大阪)

2019 Oギャラリーeyes(大阪)

2019 Oギャラリー(東京)

2020 Oギャラリーeyes(大阪)

2021 Oギャラリーeyes(大阪)

2022 Oギャラリーeyes(大阪)

 

・グループ展

1996 日中友好展(上海大学美術学院・中国)

1997 Art Craft Festival(兵庫県立丹波年輪の里・兵庫)

1997 吉田山森のてんらんかい(吉田山・京都)

1997 Japan Art Festival97−竹のインスタレーション・アート展

(沼津御用邸記念公園・静岡)

1998 Japan Art Festival98−竹のインスタレーション・アート展

(沼津御用邸記念公園・静岡)

1999 996 グループ展(大阪府立現代美術センター・大阪)

1999 プライマリー ステートメント(シティギャラリー・大阪)

1999 Compact Disc V.A.

(神戸アートビレッジセンター/KAVCギャラリー・神戸)

1999 絵画劇場−第四幕(Oギャラリーeyes・大阪)

2000 寄せ算〈yosezan〉(日下画廊・大阪)

2000 プライマリー ステートメントV(Oギャラリーeyes・大阪)

2000 Japan Art Festival 2000−竹のインスタレーション・アート展

(沼津御用邸記念公園・静岡)

2000 誘発の相貌(Oギャラリー・東京)

2001 波走の紡ぎ(Oギャラリーeyes・大阪)

2002 SOURAOギャラリーeyes・大阪)

2002 ボーダー -見えるものと見えないもの-(マサシ・ヤマギャラリー・東京)

2002 3人のドローイング(不二画廊・大阪)

2005 SOURA 05Oギャラリーeyes・大阪)

2007 In MotionOギャラリー・東京)

2009 第6 U35500人アーティスト小作品販売EXHIBITION

(横浜赤レンガ倉庫・横浜)

2009 第1 YOKOHAMA ART DOMAIN展(横浜赤レンガ倉庫・横浜)

2011 SOURA-SAISAIOギャラリーeyes・大阪)

2012 ドラッグ&ドロップ(Oギャラリーeyes・大阪)

2013 KYOTO CURRENT 2013(京都市美術館別館・京都)

2014 Absolute basis 沓澤貴子と西村みはるの場合

Oギャラリーeyes・大阪)

2017 西村みはるとENK DE KRAMEROギャラリーeyes・大阪)

2018 輝いて麗しの油絵具(Oギャラリーeyes・大阪)

2019 開廊20周年記念展「続・絵画劇場」(Oギャラリーeyes・大阪)

2023 Reproduction 2023Oギャラリーeyes・大阪)

 

・参考文献

「美術手帖」20021月号(特集:正しいアートの買い方入門)

小吹隆文:「art scape201171日号(「SOURA-SAISAI」展 レビュー)

安達一樹:「西村みはる」Oギャラリーeyes 2023 個展DM(テキスト)

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