●Still life−静物は沈黙を容認しない

 

 

 ■展覧会趣旨 [Purpose of Exhibition]

古代ローマ時代の壁画から起源をもつといわれている静物画は、西洋絵画の歴史の中で装飾的、宗教的な要求を経て、高度な写実から後の印象派やキュビズムといった絵画空間への分析を深める対象へと発展してきました。静物を対象とした作品は絵画に留まらず、写真や立体、現在ではPOV-Ray等レイトレーシングソフト等をつかったデジタルアートまで幅を拡げています。現実と虚構、豊かさと儚さ、光と影が交錯する静物画は、混乱と不透明さが増す現代において私たちの眼になにを映し出すでしょうか。本展は静物を直截的に描写したものから、物の佇まいより気配を感受し体現を試みたもの、モチーフの形状や細部等を捉えながら作家の執着性が差し込まれた作品等、様々な観点から着手された静物画をご紹介します。

OギャラリーeyesO Gallery co.,ltd.

 ■児玉靖枝 Yasue Kodama

flora6

41.0×53.0cm カンヴァスにジェッソ、蜜蝋、顔料 2023

flora2

41.0×53.0cm カンヴァスにジェッソ、蜜蝋、顔料 2023

flora5

41.0×53.0cm カンヴァスにジェッソ、蜜蝋、顔料 2023

 

 ■児玉靖枝 コメント  [Artist Statement]

窓際に"flora"と名付けられたガラスの器を置いてみた。

私たちは如何にしてそれがそこにあることを確かめることができるのだろう。

絵の具を用いて窓の外の木の葉の影を追っていくと余白は光に転じ、それは画面上に立ち顕れるのだけれど、瞬く間に影は移ろい、その光と影を入れ換える。

それはただ黙してそこにあり、見る人の意識をざわめかせる。

 ■略歴  [Artist Biography]

1961年、兵庫県生まれ。1986年、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。1986年、アートスペース虹(京都)にて初個展を開催。以降、トアロード画廊(神戸)、石屋町ギャラリー(京都)、ギャラリー21+葉(東京)、東京画廊(東京)、セゾンアートプログラム・ギャラリー(東京)、Oギャラリーeyes(大阪)、MEM(東京)、松原通りギャラリーシルクロ(佐賀)、京都トアロード画廊(京都)等で個展を開催。主なグループ展に、1992年、筆あとの誘惑−モネ、栖鳳から現代まで−(京都市美術館・京都)。1994年、VOCA 1994(上野の森美術館・東京 ※以降`96 `97 `98年に出品)、光と影−うつろいの詩学−(広島市立現代美術館・広島)。1995年、視ることのアレゴリー(セゾン美術館・東京)。1996年、水際−日本の現代美術展−小清水漸+児玉靖枝(ヨコハマポートサイド ギャラリー・横浜)。2002年、未来予想図−私の人生☆劇場(兵庫県立美術館・神戸)。2007年、DIALOGUES PaintersViews on the Museum Collection(滋賀県立近代美術館・滋賀)。2009年、LINK−しなやかな逸脱(兵庫県立美術館・神戸)。2010年、プライマリー・フィールドU: 絵画の現在−七つの〈場〉との対話(神奈川県立近代美術館・神奈川)。2012年、新incubation 4「ゆらめきとけゆく」展(京都芸術センター・京都)。2013年、プレイバック・アーティスト・トーク(東京国立近代美術館・東京)、2014年、クインテット−五つ星の作家たち(損保ジャパン東郷青児美術館・東京)。 2018年、モネ それからの100年(名古屋市美術館・名古屋、横浜美術館・横浜)。2019年、みつめる−見ることの不思議と向き合う作家たち(群馬県立館林美術館・群馬)。2020年、それぞれのながめ(徳島県立近代美術館・徳島)。2022年、第34回京都美術文化賞受賞記念展(京都文化博物館・京都)等、他多数出品。

 ■四間丁 愛 Megumi Shikencho

ダンボール 回収 何曜日

72.7×60.6cm カンヴァスにアクリル絵具 2023

 

 ■四間丁 愛 コメント  [Artist Statement]

整理整頓され正しく配置されている心模様であるようにと毎日願っている。

しかし整理整頓していたとしても外側と内側からの影響によって、

正確に配置された中身が押しつぶされ、こうありたい状況からズレることも多い。

整理整頓の行為と圧迫の状態を、風景と静物に置き換え可視化することで、遠い目線でその心模様と向き合えるような気がする。

 ■略歴  [Artist Biography]

1989 年、富山県生まれ。2015年、京都精華大学大学院博士前期課程芸術研究科版画分野を修了。2014年、GALLERYはねうさぎ(京都)にて初個展を開催。以降、Oギャラリーeyes(大阪)、ギャラリー恵風(京都)にて個展を開催。主なグループ展に、2013年、KINOPRINT 2013GALLERY ARTISLONG・京都)、関西八芸術大学版画ポートフォリオ展(石田大成社文化ホール・京都)、学生ヨル会議@アートch 持ち腐れだと、誰が言った。展(つくるビル・京都)、第38回全国大学版画展(町田市立国際版画美術館・東京)。2014年、SEIKA CERAMICS + PRINTMAKING(ギャラリー恵風・京都)。2015年、what I've chosen | what I chose vol.3(成安造形大学ギャラリーアートサイト・滋賀)、New Print Artist 2015Gallery Jin Esprit+・東京)、セマンティックポートレイト3Oギャラリーeyes・大阪)。2016年、繕いの光景V−Beyond the imagination and realityOギャラリーeyes・大阪)。2017年、icon いま、人を描く。岡本里栄・四間丁愛(成安造形大学ギャラリーアートサイト・滋賀)。2018年、堅田*はまさんぽ〜アートでまち歩き〜(堅田浜通り商店街およびその周辺・滋賀)。2020年、日韓友好版画展(兵庫県立美術館 ギャラリー棟3階・兵庫)。2021年、アナタと私のねじれた世界(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■中岡真珠美 Masumi Nakaoka

青いタイル、陶器の破片

39.5×54.6cm 紙に色鉛筆、アクリル絵具、パステル 2023

2つのコップと何か

25.9×32.2cm 紙に色鉛筆、アクリル絵具 2023

Untitled

33.0×32.5cm ラミネート紙にアクリル絵具、アクリル樹脂 2019

 

 ■中岡真珠美 コメント  [Artist Statement]

風景を描く取り組みの中で、近い風景画として静物画を描いたのは2018年だった。画中画のモチーフとして静物画を描いたりもした。今回の展覧会を受けて○○としての静物画ではなく、静物画を描いてみようと思う。

見知らぬ誰かがした意図のない配置。普段の制作では描くことがなく何となく溜め込んでいたものたちに目を向けた。。

 ■略歴  [Artist Biography]

1978年、京都府生まれ。2004年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。2004年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催。(以降、同ギャラリーで毎年個展を開催)。2005年、project N(東京オペラシティアートギャラリー・東京)。2008年、INAXギャラリー2(東京)、第一生命南ギャラリー(東京)。2009年、view point(アートフロントギャラリー・東京)※以降、同ギャラリーにて継続的に個展を開催。2016年、チェンマイにあるgallery seescape(タイ)にて個展を開催。主なグループ展に、2003年、トゥールビヨン(Oギャラリーeyes・大阪)。2004年、神戸アートアニュアル2004-トナリノマド(神戸アートビレッジセンター・神戸)。2005年、第一回倉敷現代美術アート・ビエンナーレ(倉敷市立美術館・岡山)では“準グランプリ”を受賞。2007年、VOCA2007(上野の森美術館・東京)では“佳作賞”を受賞。2012年、新鋭各賞受賞作家展「New Contemporaries」(京都市立芸術大学ギャラリーアクア・京都)。2014年、DepthOギャラリーeyes・大阪)、震災から20年震災 記憶 美術(BBプラザ美術館・神戸)。2016年、Ngon Lam(フエ大学・ベトナム)Semi(チェンマイ大学ギャラリー・タイ)。2017年、Art Stage Singapore 2017Marina Bay Sands・シンガポール)、Expozite Internationala de Arta Contemporana(サトゥマーレ美術館・ルーマニア)、第35回京都府文化賞にて“奨励賞”を受賞。2019年、続・絵画劇場(Oギャラリーeyes・大阪)。2021年、Play back/微笑みのあと(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。2022年、京都市芸術新人賞を受賞。

 ■野中 梓 Azusa Nonaka

夕方、小窓から陽が差す時のトイレの壁

53.0×65.2cm カンヴァスに油彩 2023

 

 ■野中 梓 コメント  [Artist Statement]

絵画の中に現れるイメージはどこからやってくるのか。学生時代のわたしにとってそれは、ひそやか且つ重大な問題だった。

学部生の頃に自画像を描く課題がよく出た。わたしは自分の姿を、物を見て描くように描きたいと考えた。視覚の外、自分の外にある像を、油絵具に頼りながら取得していく。そうした過程は、描く対象が変わった今でも続いている姿勢だと思う。

 ■略歴  [Artist Biography]

1991年、大阪府生まれ。2016年、京都嵯峨芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻造形絵画分野を修了。2016年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催(以降、同ギャラリーにて毎年個展を開催)。主なグループ展に、2012年、blue projectMATSUO MEGUMIVOICE GALLERY pfs/w・京都)。2013年、KYOTO CURRENT 2013(京都市美術館別館・京都)。2015年、Perfume Art Project(堀川出水団地第三棟・京都)、京都-清州「現在美術の地層2015」−状態としての存在−(京都嵯峨芸術大学・京都)、トゥールビヨン 13Oギャラリーeyes・大阪)。2016年、思考する視線 2016Art Space-MEISEI・京都)、−世代を超えて2人展vol.6− 宇野和幸・野中梓2人展(銀座 K'sギャラリー・東京)、LA VOZ 22nd EXHIBITION(京都市美術館・京都)。2017年、Between the scene and the form 2017Oギャラリー・東京)。2018年、思考する視線2018Art Space-MEISEI・京都)、Young Creators Award 2018MIギャラリー・大阪)。2019年、HANKYU ART FAIR Neo SEED(阪急うめだ9階祝祭広場・大阪)、「入佐美南子と嵯峨美の仲間たち」展(アートスペース嵯峨・京都)、新・輝いて麗しの油絵具(Oギャラリーeyes・大阪)。2021年、群馬青年ビエンナーレ2021(群馬県立近代美術館・群馬)。2022年、ドラッグ&ドロップ2022Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■古川松平 Shohei Furukawa

静物-2023

72.7×100.0cm カンヴァスに油彩 2023

 

 ■古川松平 コメント  [Artist Statement]

展覧会のお話をいただいた時、テーマに向けて制作できることがすごく楽しみでした。今まで制作にあたって表現したいと思っていたものに沿ったものと考えたからです。

移り変わる日々を構成し、移動を繰り返す身近にあるものに視点をとどめ、同時にそこにないが起こっていることに想像を巡らす。そうすることで、今を切り取り、無意識にも個人的な風景から脱却した普遍的な表層が表現できるのではと考えています。

 ■略歴  [Artist Biography]

1980年、佐賀県生まれ。2004年、大阪芸術大学芸術学部美術学科研究生を修了。2004年、module.(大阪)にて初個展を開催。以降、gallery coco(京都)、Oギャラリーeyes(大阪)、Oギャラリー(東京)、リトルバード(大阪)にて個展を開催。主なグループ展に、2003年、ART CAMP in CASO(海岸通ギャラリー CASO・大阪)。2005年、Between the scene and the formOギャラリーeyes・大阪)、View/IntrospectionV−DivertimentoOギャラリーeyes・大阪)。2006年、トゥールビヨン4(Oギャラリーeyes・大阪)。2007年、「美の冒険者たち」なんばパークスアートプログラムVol.4 私のありか(パークスホール・大阪)。2009年、スタンダード ジャパン エディション(Oギャラリーeyes・大阪)。2011年、 大阪芸術大学美術学科作家展(ギャラリーkazahana・京都)。2012年、KICKSOギャラリーeyes・大阪)。2014年、リトルバード美術館(リトルバード・大阪)。2015年 The garden of the ray 5Illuminated placeOギャラリーeyes・大阪)。2017年、トゥールビヨン0Oギャラリーeyes・大阪)。2018年、outside and the inside 5−眺めのコンフィギュレーション(Oギャラリーeyes・大阪)。2019年、Restriction 2019Three full daysOギャラリーeyes・大阪)。2021年、遮りの景象−ソノムコウヘ(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■山内裕美 Yumi Yamauchi

セザンヌ_静物06

72.6×60.6cm カンヴァスに油彩 2023

 

 ■山内裕美 コメント  [Artist Statement]

この作品はセザンヌの静物画をモチーフにしています。

以前、私は自身の嫌悪感を持つものを対象とし絵画を制作しましたが、この作品はそれとは反対に好感を抱いているものを対象としています。この2つは一見正反対のように思われますが、自身の嗜好に基づいたものを対象としているという点において均しいと認識しています。

筆をすすめていくうちにセザンヌの模倣から、いつのまにか紛れも無く自身のものに変換されていく過程は、絵画を構築していくことそのものであると感じています。

 ■略歴  [Artist Biography]

1976年、兵庫県生まれ。2003年、京都精華大学大学院芸術研究科造形専攻を修了。2002年、アートスペース虹(京都)にて初個展を開催。以降、Oギャラリーeyes(大阪)、OギャラリーUPS(東京)にて個展を開催。主なグループ展に、2004年、トゥールビヨン2Oギャラリーeyes・大阪)。2007年、Between the scene and the form '07Oギャラリーeyes・大阪)、2010年、“global connections and implicationsLouisiana State University 150th AnniversaryLouisiana State University・アメリカ)。2012年、KICKSOギャラリーeyes・大阪)。2016年、STUDIES / Lithograph -リトグラフの方法について-kara-Sギャラリー・京都)、Enigmatic behavior なんで年寄って真夏に熱いお茶を好んで飲むの?(Oギャラリーeyes・大阪)。2017年、トゥールビヨン0(Oギャラリーeyes・大阪)、Stone Letter Project−石からの手紙#1(宝塚大学 gallery TRI-ANGLE・兵庫)、非在の庭 最終章(アートスペース虹・京都)。2021年、間際の美(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■山崎 亨 Toru Yamasaki

Silent

30.0×22.5cm 木製有孔ボードに写真 2023

Beginning

60.5×43.1cm 木製有孔ボードに写真 2023

 

 ■山崎 亨 コメント  [Artist Statement]

素材に素材の写真を還す(プリントする)愉しみをはじめました。選んだ素材で工作をして黒布の上で撮影をします。この時、写真の【地と図】のうち図だけを還します。よって支持体である素材が【地】になり【地=支持体=素材】+【図(写真)】という絵になります。今回は有孔ボードを素材として静物画を作りました。虚実の孔だらけの画を眼で触るように観てもらえたらと思います。

 ■略歴  [Artist Biography]

1960年、大阪府生まれ。1982年、大阪芸術大学芸術学部美術科を卒業。1982年、靭画廊(大阪)にて初個展を開催。以降、シティギャラリー(神戸)、オンギャラリー(大阪)、ギャラリービュー(大阪)、ギャラリーKURANUKI(大阪)、サイギャラリー(大阪)、ギャラリーNWハウス(東京)、ギャラリーココ(京都)、信濃橋画廊(大阪)、GALLERY wks.(大阪)等で個展を開催。主なグループ展に、1986年、アート・ナウ '86(兵庫県立近代美術館・神戸)、アート・ブリッジ展(さんちかホール・神戸、ヒモヴィッツ・ソロモン・ギャラリー・カリフォルニア)、アート・フロント“イマージュ装置”(心斎橋パルコ・大阪)。1989年、次代を担う作家たち展(京都府立文化芸術会館・京都)。1990年、脱走する写真−11の新しい表現(水戸芸術館現代美術ギャラリー・茨城)。1992年、彫刻の遠心力−この10年の展開(国立国際美術館・大阪)。1993年 美術の中のかたち―手でみる造形(兵庫県立近代美術館・神戸)。1994年、身体美術感(ハラミュージアムアーク・群馬)、眼の宇宙−かたちをめぐる冒険(兵庫県立近代美術館・神戸)。1995年、済州道プレ・ビエンナーレ'95(アート・センター・韓国)。1996年、美術鑑賞ってなんだろう(芦屋市立美術博物館・兵庫)、ハンド・メイド・オブジェ(滋賀県立近代美術館・滋賀)。2000年、Art Contact(名古屋市民ギャラリー・名古屋)。2019年、COVER W(CAS・大阪)、Depth 2019Oギャラリーeyes・大阪)。2021年、Play back/微笑みのあと(Oギャラリーeyes・大阪)。2022年、関西の80年代(兵庫県立近代美術館・神戸)等他多数出品。

 

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