●outside and the inside 7−眺めのままに

阿部真也・小川直樹・日下部一司・中田由絵・西山一葉・ふなだかよ・松井沙都子

 

 

 ■展覧会趣旨 [Purpose of Exhibition]

自宅を出てふと見上げた空の広がりや、街並みの狭間から見える眺め等、ある瞬間我々の感覚を刺激し、その情景や空間に魅了されることがあります。また何気なく手にふれたものの触感から、思いもよらない発想や衝動に駆られる事もあるでしょう。そうした日常的事象からの影響や欲求を作家はどのように受け止め、外在する世界と自らの内面との関係を有用なものにしているのでしょうか。本展では、対象における内/外の認識と、日常空間からの抑制と開放といった相関の狭間で交差する心的状況が、作品へどのように反映されイメージとなる像が浮上してくるのか、それぞれの作品から読み取ります。

OギャラリーeyesO Gallery co.,ltd.

 ■阿部真也 Shinya Abe

眺め

51.5×72.8cm パネルにアクリル絵具 2023

 

 ■阿部真也 コメント  [Artist Statement]

現実以上のものを見たいという衝動が私にとっては制作の根拠であり、それゆえに描かれては「現実」になっていく─それが「作品」とされ、凡庸なカテゴライズに埋没していく─逃れられない摂理に歯痒さを感じながら、その満たされない思いこそが自身の内奥に可能的な眺望を夢見させ、制作の衝動に立ち返らせるのです。私にとって現実は夢の補助線であり、私の真に欲する眺めは、いつも夢の中にあります。

 ■阿部真也 略歴  [Artist Biography]

1999年、兵庫県生まれ。2021年、嵯峨美術短期大学 美術学科美術分野洋画・現代アート領域を卒業。2023年、嵯峨美術短期大学 専攻科美術専攻修了。現在、嵯峨美術短期大学研究生として在籍.。主なグループ展に、2022年、Beyond the structure 2022Oギャラリーeyes・大阪)、トゥールビヨン 20Oギャラリーeyes・大阪)。2023年、ゆめのとりこぼし(嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学 附属ギャラリー アートスペース嵯峨・京都)。

 ■小川直樹 Naoki Ogawa

黒山羊と姫の帰還

100.0×80.3cm カンヴァスに油彩 2023

 

 ■小川直樹 コメント  [Artist Statement]

「夢から現実へ、扉の内側から外側へ」

ベッドの上で目覚めて、1日の準備を済ませ、玄関の扉を開けて職場へ向かう。

毎日の決まった道のりで同じ場所に向かい仕事をして、帰ってまた家の扉を開ける。

いつも通り扉を閉めて、ふと玄関の棚の置き鏡に目を向けると「我々もたった今、鏡の世界から帰って参りまして」と言わんばかりの、妙な格好で置かれた人形と目が合った気がして、それがなんだかとても可笑しかったのです。

ふと、当たり前になっている「扉を開けて外に出る」行動も、実は気付かぬうちに神秘的な世界に足を踏み込む行為なのかもしれないなと思い、少しだけ日常が楽しくなりました。

 ■小川直樹 略歴  [Artist Biography]

1984年、島根県生まれ。2008年、成安造形大学造形学部造形美術科洋画クラス研究生を修了。2008年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催(以降、同ギャラリーにて毎年個展を開催)。2012年、Oギャラリー(東京)にて個展を開催(以降、同ギャラリーにて2015年、2017年に開催)。主なグループ展に、2010年、シェル美術賞2010(代官山ヒルサイドフォーラム・東京)。2011年、THE GALAXYOギャラリーeyes・大阪)。2012年、群馬青年ビエンナーレ(群馬県立近代美術館・群馬)。2013年、DrawingExposed essence 2013Oギャラリー eyes・大阪)。2015年、京都新鋭選抜展2015(京都文化博物館・京都)、FACE2015 損保ジャパン日本興亜美術賞展(損保ジャパン日本興亜美術館・東京)、トゥールビヨン13(Оギャラリーeyes・大阪)。2016年、FACE2016(損保ジャパン日本興亜美術館・東京)にて“審査員特別賞”と“オーディエンス賞”を受賞。同年、シェル美術賞展2016(新国立美術館・東京)にて“グランプリ”を受賞。2019年、続・絵画劇場(Oギャラリーeyes・大阪) 。2020年、The extracted element 2020Oギャラリー・東京)。2021年、アナタと私のねじれた世界(Oギャラリーeyes・大阪)、遮りの景象−ソノムコウヘ(Oギャラリーeyes・大阪)。 2022年、Restriction 2022By three peopleOギャラリーeyes・大阪)。2023年、Between the scene and the form 2023Oギャラリー・東京)等に出品。

 ■日下部一司 Kazushi Kusakabe 

矩形の感触

32.0×28.0cm ゼラチンシルバープリントに着彩 2023

二本の木

32.0×28.0cm ゼラチンシルバープリントに着彩 2023

 

 ■日下部一司 コメント  [Artist Statement]

相手が私を見ている。ファインダーを覗いて対象を見ているつもりが、実は被写体から見つめられているのだ。カメラの中の四角い窓は、自分を凝視する視線に気付く仕掛けでもある。シャッターを押すことで、その瞬間を彼らの側に立って記録することになるのだろう。カメラの中の四角いスクリーン、それを境とした「あちら側」と「こちら側」が緊張関係を保ちながら写しとられる。写真はこのように立体的な構造をしている。

 ■日下部一司 略歴  [Artist Biography]

1953 年、岐阜県生まれ。1976 年、大阪芸術大学芸術学部美術学科版画専攻卒業。1975 年、ギャラリー射手座(京都)にて初個展を開催。以降、信濃橋画廊(大阪)、シティギャラリー(神戸)、ギャラリーココ(京都)、ウエストベスギャラリー・コヅカ(名古屋)、SAI GALLERY (大阪)、The Third Gallery Aya(大阪)、O ギャラリーeyes(大阪)、伊丹市立工芸センター(兵庫)、京都造形芸術大学芸術館(京都)、ギャラリーヤマグチクンストバウ(大阪)、Marie Gallery(東京)、ギャラリーすずき(京都)、MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w(京都)等で個展を開催。その他、京都市美術館(京都)、東京都美術館(東京)、ブラッドフォード美術館(イギリス)、リュブリアナ美術館(旧ユーゴスラビア)、兵庫県立美術館(神戸)、大阪府立現代美術センター(大阪)、岐阜県美術館(岐阜)、ウオーカーヒルアートセンター(韓国)、姫路市立美術館(兵庫)、ドイツ文化センター(ドイツ)、中之島デザインミュージアム(大阪)、京都市文化博物館(京都)、大阪府立江之子島文化芸術創造センター(大阪)、徳島県立近代美術館ギャラリー(徳島)、谷崎潤一郎記念館(兵庫)等、国内外の美術館、その他ギャラリーで開催されたグループ展等に多数出品。

 ■中田由絵 Yue Nakada

Soul journey 2312

72.7×100.0cm パネルに和紙、岩絵具 膠、アクリルガッシュ 2023

 

 ■中田由絵 コメント  [Artist Statement]

私は「生命」をテーマに作品を制作しています。以前は自然の風景や植物をモチーフとして使い象徴的に表現してきました。しかしなぜ自然に惹かれるのか、その生物(植物)を通して私が何を見ているのかを考えるようになり、最近は特に生物(植物)の形態や構造に興味を持つようになりました。生まれては死んでいくものたち、空や大地、海といった場所。未来でありながら昔でもある今。私は、世界のさまざまな連続性の中で見られる「生命」をどのように表現できるのか、模索しています。

 ■中田由絵 略歴  [Artist Biography]

1976年、愛知県生まれ。1999年、名古屋芸術大学美術学部版画コースを卒業。2001年、京都市立芸術大学大学院美術研究科(版画)修了。2000年、番画廊(大阪)にて初個展開催。以降ギャラリーAPA(名古屋)’00,03,09,11、ギャルリーDECO(名古屋)’02,03,04Oギャラリーeyes(大阪)’05,06Lギャラリー(名古屋)’05,06,10,13,17,21、織部亭(愛知)’19にて個展を開催。主なグループ展に、1999年、第4回国際高知版画トリエンナーレ(いの町紙の博物館・高知)、次代の版画-京都と名古屋から(愛知芸術文化センターX・名古屋)。2000年、京都美術工芸展2000(京都文化博物館・京都)。2001年、版表現・広がる表象2001(愛知県美術館ギャラリー・名古屋)2002年、版の思考・版の手法2002(愛知県立美術館ギャラリー・名古屋)。2003年、The Principle MealsAtelier ART Gallery・バンコク)。2005年、Independent(愛知県美術館ギャラリー・名古屋)、LEXHIBITIONLギャラリー・名古屋)’07,08,09102010年、あいちアートの森(堀川プロジェクト・名古屋)、2019年、LAYERLギャラリー・名古屋)、CreatureLギャラリー・名古屋)等に出品。その他の活動として、アーティストインレジデンス2003年、Remisen Brande(デンマーク)、アーティストインレジデンス2014年、Gludsted(デンマーク)に参加。

 ■西山一葉 Itsuha Nishiyama

黒に溶ける1

41.0×41.0cm 紙にシルクスクリーン 2023

黒に溶ける2

41.0×41.0c m 紙にシルクスクリーン 2023

 

 ■西山一葉 コメント  [Artist Statement]

私は動物が好きなのですが、猫でも犬でもなんでも見かけると嬉しい気持ちになります。スーパーの前で賢く待っている犬だったり、こっちを警戒して早歩きの野良猫、駅のホームで人混みに混ざる鳩、なんでも可愛いです。頬も心なしか緩みます。

ただ、あっ猫!と思ってニヤけながら近づくとゴミ袋だったりします。黒猫が家にいるとそんな見間違いが頻発します。

 ■西山一葉 略歴  [Artist Biography]

2000年、三重県生まれ。2022年、大阪芸術大学芸術学部美術学科版画コースを卒業。主なグループ展に、2021年、第24回学生作品オークション作品展示販売(あべのハルカス 大阪芸術大学スカイキャンパス・大阪)。2022年、トゥールビヨン20Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■ふなだかよ Kayo Funada 

誘惑のゲート

H71.0×w54.0×d67.0cm 羊毛フェルト、針金 2023

 

 ■ふなだかよ コメント  [Artist Statement]

外側に居る「母」であろうとする母親。母と娘は幸せを願っていて、その為にどうすれば良いかといつも考えている。娘の存在は愛しくて生きる目的と癒しをくれる。娘も母が大好きで安心できて一緒にいたい。ずっとずっと。ゲートはいつもすぐ側でふとした瞬間に誘惑してくる。二人で食べられてしまえば、向こう側は安住の地。「母」は行ってはいけないと知っているが、幼い娘は手を差し出して求めるから、今のうちに手を取れば、簡単にくぐれるかもしれない。

 ■ふなだかよ 略歴  [Artist Biography]

1979年、京都府生まれ。2002年成安造形大学ファイバーアートクラス卒業、2004年、成安造形大学立体造形研究生を修了。成安造形大学ギャラリーアートサイト(滋賀)、Oギャラリーeyes(大阪・東京)、CAS(大阪)などにて個展を開催。主なグループ展に、2001年、OPPAI ART LAB πr事情展(ワコール本社ビル・京都)。ART ENSEMBLE(大阪ビジネスパーク・大阪)。2006年、京都美術工芸新鋭選抜展(京都文化博物館・京都)。2010年、2011年、日韓交流展 W-doorCAS・大阪、salon de H・ソウル)。The Responsive Eye(海岸通ギャラリー CASO・大阪)。2017年、モノと精神−日韓交流展(海岸通ギャラリーCASO・大阪)。2018年、固体−液体の臨界点はまだ発見されていない(Space Willing N Dealing・ソウル)、2021年、SEIAN ARTS ATTENTION 14 Re:Home(成安造形大学【キャンパスが美術館】・滋賀)。2023年、「zu Hause 自宅と承認」(デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITO・神戸)等に出品。 

 ■松井沙都子 Satoko Matsui

Outside

9.2×9.2cm 写真、スチール製フレーム 2013-2023

Frames #14

h31.4×w53.5×d11.9cm 木材、油性塗料、LED 2023

 

 ■松井沙都子 コメント  [Artist Statement]

私は常々「空っぽの展示空間」に関心を寄せている。それはさも何かを置くことができそうなのに、いつまでも満たされない、空虚で美しい空間である。絵画の木枠がモチーフのFramesシリーズは、こうした空間をとても小さな規模で実現する。

本展に際して私は、このFramesInside の役割を担うものと捉え、特別にOutsideの要素を添えることにした。昔スマホで撮影したスナップ写真は、太陽の光と影、自生する植物を捉えた、ミニマルなOutsideのイメージである。

 ■松井沙都子 略歴  [Artist Biography]

1981年、兵庫県生まれ。2006年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画を修了。2017年、博士(美術)(京都市立芸術大学)。2007年、gallery wks.(大阪)にて初個展を開催。以降、neutron kyoto(京都)、neutron tokyo(東京)、トーキョーワンダーサイト本郷(東京)、Gallery PARC(京都)、ギャラリー恵風(京都)、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都)、MEDIA SHOP gallery 2(京都)等で個展を開催。主なグループ展に、2014年、はならぁと こあ 「在り処をみる」(ならきたまちエリア:工場跡・奈良)、2016年、TEMPELMATERIAL(大徳寺黄梅院・京都)、2021年、SEIAN ARTS ATTENTION 14 Re:Home(成安造形大学【キャンパスが美術館】・滋賀)、2022年、「連続するプロジェクト・インスタレーションを所有する」(BnA Alter Museum SCG・京都)、2023年、「zu Hause 自宅と承認」(デザイン・クリエイティブセンター神戸 KIITO・神戸)等に出品。主なワークショップに、2019年、明倫ワークショップ「家の話を聞かせて -光のインスタレーションを作ろう-」(京都芸術センター・京都)、2022年、「ふつうの家」(武庫川女子大学 学術研究交流館IR・兵庫)。

 

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