今道由教 Yoshinori Imamichi

 

色面の出来事(22-1

H63.0×W36.0×D22.0cm 紙にパステル 2022

色面の出来事(22-2

H45.0×W35.0×D25.0cm 紙にパステル 2022

描点(ノート) 22-3

25.2×36.0cm 紙に油性インク 2022

vertical line22-4

15.5×16.1cm トレーシングペーパーにインクジェトプリント 2022

vertical line22-5

14.7×15.2cm トレーシングペーパーにインクジェトプリント 2022

vertical line22-6

9.7×20.6cm トレーシングペーパーにインクジェトプリント 2022

vertical line22-7

11.5×13.6cm トレーシングペーパーにインクジェトプリント 2022

vertical line22-8

15.9×8.4cm トレーシングペーパーにインクジェトプリント 2022

描点 (15シート) 22-9

H23.6×W142.0×D16.8cm 紙に油性インク 2022

描点 (15シート) ※部分

描点 (15シート) ※部分

色面の出来事 (圧縮) 22-10

H13.5×W11.8×D11.6cm 紙にカラージェッソ、透明水彩 2022

色面の出来事 (圧縮) 22-11

H9.0×W13.0×D13.2cm 紙にカラージェッソ、透明水彩 2022

 

 ■展覧会テキスト[Text]

今道由教の仕事は心許ない。そこに何が描かれているのか、客観的には分からないから。たとえば、ぐりぐりと筆を小さく回転させてできた筆跡の集積や、輪郭ならざる線のたゆたい。1992年から始まるそれら初期作品からしてすでに、事物の本質を捉えるとか、理念にかたちを与えるとか、そんな抽象をめぐる問いは思慮の埒外に置かれていた。今道のねらいは何かを描くことではなく「絵を立ち上げること」、つまりイメージの生成それ自体である。絵具の塊が、筆跡が、何かのかたちに「なる」手前で踏みとどまり、ずっと何かの予兆であり続けるという、そんな作品を前にしたとき、鑑賞者は読まずに、立ち会うことになるだろう。画面上に絵はない、でもいま、眼にはそれがぼんやりと浮かび上がりつつある、といった仕方で。近作のタイトルとしてしばしば用いられる「出来事」という言葉は、こうした事態に対する、より正確な表現となりえている。

2016年以降、今道は矩形という前提を捨てた。と同時に、塗るという行為が後景に退き、作品のサイズも小さくなっていく。たとえばトレーシングペーパーの表裏に、異なる色の、細かい線を印刷し、それを折り紙よろしく畳んでいく、とか。せっかく塗った紙をくしゃくしゃに丸めてみる、とか。あるいは、破って折って重ねて画面をつくっていく、とか。「絵を立ち上げる」ためには、大仰な画面も身ぶりも必要なく、むしろ非絵画的に手がけていても絵は否応なく生起してくるのだと、今道はこれらの作品をとおして証明しようと試みる。

今道由教は画家である。が、必ずしも絵画(ペインティング)の作り手とは言えない。歴史的かつ制度的な営みである絵画から距離をおき、別なる描きを見つけるため、彼はつねに絵(ピクチャー)にこそ照準を合わせてきた。非歴史的、ゆえに心許ない今道の絵は、たしかにその意義を捉えがたい。でもそれは、描くことに関する私たちの認識をたしかに塗り替えてくれる。

 

福元崇志(国立国際美術館 主任研究員)

 

 ■今道由教 コメント  [Artist Statement]

絵画には、視覚的イメージを現す表面のほかに、側面や裏面が存在します。それらは支持体の部分であり、普段、隠れたものとなっています。こうした絵画の物体的な側面に着目し、絵画には表裏があり、見える面と見えない面によって構成されていることに意識を向けながら制作しています。

支持体となる紙の加工しやすい性質を活かしながら、絵具を塗った紙に切り込みを入れて折り曲げたり、水に濡れて塗布した絵具が溶け出している紙を丸めて圧縮したりといった行為により、支持体の表裏が一体となって生成される絵画表現を模索しています。

今回、表裏に浸透する描点といった作品に取り組みました。重ねた紙の上面からに小さな通し穴をあけて、その穴に油性ペンを立てるとインクが下に向かって円状に染み込んでいきます。次に裏返して反対面の穴からも違った色のインクを染み込ませます。この2色のインクが重なったり混じり合ったりしながら、浸透の度合いによって一枚毎に図像が変化する様子を捉える試みです。

 ■略歴  [Artist Biography]

1967 大阪府生まれ

1990 甲南大学文学部社会学科卒業

 

・個展

1992 ギャラリー白(大阪)

1993 オンギャラリー(大阪)※以降〜`99年まで開催

1994 画廊ポルティコ(神戸)

2000 番画廊(大阪)

2001 SAIギャラリーWALL(大阪)※以降〜`06年まで開催

2007 番画廊(大阪)※以降`09年〜`13年まで開催

2008 SAIギャラリーWALL(大阪)

2014 Oギャラリーeyes(大阪)※以降、毎年開催

2017  大ギンガ書房(大阪)※以降、`18年開催

 

・グループ展

1997 ひらかたの若き美術家たち展(枚方市立御殿山美術センター・大阪)

2009 NEO STUDIO 9WORKS(ギャラリー菊・大阪)

2010 青の美学展(ギャラリー菊・大阪)

2012 ひらかたコンテンポラリーアート2012Note Gallery・大阪)

2012 枚方の美術家展(ギャラリー菊・大阪)

2013 New Years Art ExhibitionNote Gallery・大阪)

2013 未来を拓くExhibition(ギャラリー菊・大阪)

2013 サ・ヨ・ナ・ラbangarow展(番画廊・大阪)

2014 New Years Art ExhibitionNote Gallery・大阪)

2014 赤地さんを偲ぶ仲間たち展(茶屋町画廊・大阪)

2014 未来を拓くExhibition(ギャラリー菊・大阪)

2016  Neo Realiste 10WORKS(ギャラリー菊・大阪)

 

・参考文献

三脇康生:月刊「美術手帖」199310月号(レビュー)

中塚宏行:「今道由教」番画廊2009 個展DM(テキスト)

福元崇志:「今道由教」Oギャラリーeyes 2022 個展DM(テキスト)

Oギャラリーeyes HOME