松田豊美 Toyomi Matsuda

 

The very thing 2022-10

80.3×116.7cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-16

72.7×60.6cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-17

194.0×162.0cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-18

162.0×227.3cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-11

72.7×116.7cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-9

24.2×33.3cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-5

31.8×41.0cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-7

31.8×41.0cm カンヴァスに油彩 2022

The very thing 2022-6

33.3×33.3cm カンヴァスに油彩 2022

 

 ■展覧会テキスト[Text]

「松田豊美−The very thing

大島徹也(多摩美術大学准教授)

 

松田豊美は自らの作品を、一貫して《The very thing》と名付けてきている。直訳すれば、「まさにその物」や「ほかならぬその事」。松田自身は、おそらく「itself」というニュアンスも込めて、「そのもの」という言葉をそのタイトルに関してよく用いている。

松田の絵画は、何かを再現したものではもちろんない。かと言って、何かを抽象化したものでもない。また、何かを象徴的に描いたものでもないし、何かを連想させようとするものでもない。端的に言えば、それは、何かの代わりとしての「イメージ」ではない、そこにあるがままの絵画表現。それを松田は追求し続けている。

しかしながら松田はある時、自分は決して「画面だけの表現」を模索しているのではなく、「世界の一端」を感じながら描いている、とも言っている(202248日のステートメント)。最初私は一瞬、それは彼女の言う「そのもの」ということと趣旨の異なる発言のように感じたのだが、よく考えれば、そんなことはなく、むしろ非常に納得がいった。もし彼女の制作が「画面だけの表現」であれば、それは結局のところ、「イメージ」というものに取り込まれてしまうことになるのではないか。絵画における「イメージ」というものは、それほどに柔軟で執拗なものである(そして、だからこそ「絵画」は奥が深い)。「そのもの」を追求する松田の絵画は、その表現自体が世界の一構成要素としての存在性を確かに備えた時、まさに「そのもの」となりうるということだろうか。そんなことが可能なのかどうかということも含めて、私は松田の仕事に注目している。

いずれにせよ松田の絵画は、1950年代の抽象表現主義の様式との表面的な類似性を思わせる場合があるが、それを乗り越えるためのひとつの可能性は、彼女の色彩感覚にあるように私は感じている。レッド、ブルー、イエロー、グリーン、オレンジ、パープル、ピンクといったさまざまな鮮やかな色彩を、けばけばしくなってしまう手前のところで次々と力強く使い、画面を作り上げていく彼女のセンスは特筆に値する。他方では、松田独自の「そのもの」の追求ということがいっそう深まり進んでいけば、上記の表面的な問題は自ずと解消されていくような気もする。大きな期待をもって、彼女の仕事を見守ってゆきたい。

 

 ■松田豊美 コメント  [Artist Statement]

油絵具ですべきことがたくさんあります。

それを逸れることなくひとつずつ進めていくために一枚一枚が重要な意味を持ち、次に何をすべきかが明確にわかっています。

今年の夏頃までの作品(The very thing 2022-11まで)は、一筆描くと次に出る描くべきことを肯定しながら描くという方法で描きました。

その後、試すべきこと『もう一歩、奥深く踏み込んで描き、そのものをもっと育てる』ということを実行し良い試行錯誤ができました。

自分の表現のステレオタイプではなく未知の感覚や表現を体感したい。

そこには画業という一本のゆるぎない道があり、少しずつ緩やかに進んでいます。

年々、自由になり表現の可能性は無限だと強く思っています。

目と脳はいつも曇らないように磨き、ここに生きていて、有る物事を感じてそのままを捉えるように、そして私自身の可能性を自分自身で制限しないように心がけています。

そのまま観ていただけたら嬉しいです。

 ■略歴  [Artist Biography]

1970 大阪府生まれ

1993 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業

 

・個展

1996 番画廊(大阪)

1996 CUBIC GALLERY(大阪)

1997 CUBIC GALLERY(大阪)

1999 ラポギャラリー(大阪)

1999 CUBIC GALLERY(大阪)

2004 CUBIC GALLERY(大阪)

2019 Oギャラリーeyes(大阪)

2020 Oギャラリー eyes(大阪)

2021 Oギャラリー(東京)

2021 Oギャラリー eyes(大阪)

 

・グループ展

1995 HATCH PATCH展(ESPACE446・大阪)

1998 光脈の湧出(Oギャラリー・東京)

1998 PAINTINGCUBIC GALLERY・大阪)

1998 CCD−あるいは眼球としての身体−(gallery coco・京都)

1999 3WEEKS FOR 20PAINTINGSgallery coco・京都)

2002 PAINTINGCUBIC GALLERY・大阪)

2003 land-scapeCUBIC GALLERY・大阪)

2005 第1回倉敷現代アートビエンナーレ・西日本(倉敷市立美術館・倉敷)

2007  VOCA2007 現代美術の展望−新しい平面の作家たち

(上野の森美術館・東京)

2007  Paintings 2007CUBIC GALLERY・大阪)

2020 SOU-JR総持寺駅アートプロジェクト「そこから眺める向こう」

JR総持寺駅構内自由通路・大阪)

2020 real SOU #6 SOUのほんもの作品展(茨木市本町センター・大阪)

2021 Absolute basis 俵萌子と松田豊美の場合(Oギャラリーeyes・大阪)

2022 大島麻琴 松田豊美 二人展 Oギャラリー(東京)

2022 FACE2022 SOMPO美術館)

 

・参考文献

山本淳夫:月刊「美術手帖」19965月号(レビュー)

山本淳夫:「CCD−あるいは眼球としての身体−」gallery coco 1998(テキスト)

山本淳夫:「VOCA2007」カタログ(テキスト)

大島徹也:「松田豊美」Oギャラリーeyes 2022 個展DM(テキスト)

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