●Play back/微笑みのあと 

 

 

 ■展覧会趣旨 [Purpose of Exhibition]

本展は5名の作家による過去に制作された作品と新作をあわせてご紹介致します。現在の作品への理解を深める上で過去の作品にも焦点をあて、それぞれの作品に見受けられる相違や軌跡、そこから顕在化される質へと迫ります。

展覧会タイトルに「Play back」とありますが、過去の作品を振り返って現在の作品をひとつのアンサー(答え)と位置付けるのではなく、当時の試みと現在の取り組みに対するレスポンス(応え)としてふたつの作品を捉え、過去と現在の試みを辿ります。

OギャラリーeyesO Gallery co.,ltd.

 

 ■日下部一司 Kazushi Kusakabe

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

書く・消す−書く・消す

14.8×10.0cm 官製葉書に鉛筆、切手、他 2001

a blackboarda blackboard

H31.0×W46.0×D7.0cm 木に黒板塗料、チョーク 2021

 ■日下部一司 コメント  [Artist Statement]

何人かの人にお願いし、官製葉書を使った文通をしたことがある。今回出品した旧作はそのときの記録「書く・消す-書く・消す」からのものだ。

先ず私が鉛筆で便りを書いて相手に送ることから始める。相手はそれを読んでから消しゴムで消し、同じ紙面に鉛筆で返事と宛名を書き・切手を貼って投函する、そしてこちらはまた同じように文面を消し・返信を書き送信する、というやりとりを一枚の葉書で繰り返すのである。繰り返し通信素材として使ううちに、ただの葉書が別ものに変化していく様子を双方で確かめるという試みだ。もう20年も前の作品になった。

先日、ネットオークションを見ていて「筆」というチョークの文字がうっすら残る黒板を見つけ、欲しくなった。出品者によると黒板消しでも消えないらしい。消しているのに文字と行為の痕跡が残る古い黒板・・・。20年前と同じように、こういうモノに相変わらず反応することが我ながら可笑しい。

■略歴  [Artist Biography]

1953年、岐阜県生まれ。1976年、大阪芸術大学芸術学部美術学科版画専攻卒業。1975年、ギャラリー射手座(京都)にて初個展を開催。以降、信濃橋画廊(大阪)、シティギャラリー(神戸)、ギャラリーココ(京都)、ウエストベスギャラリー・コヅカ(名古屋)、SAI GALLERY(大阪)、The Third Gallery Aya(大阪)、Oギャラリーeyes(大阪)、伊丹市立工芸センター(兵庫)、京都造形芸術大学芸術館(京都)、ギャラリーヤマグチクンストバウ(大阪)、Marie Gallery(東京)、ギャラリーすずき(京都)、MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w(京都)等で個展を開催。主なグループ展に、1979年、実験35人の方法と展開(京都市美術館・京都)。1980年、アートナウ ’80(兵庫県立美術館・神戸)。1981年、現代の平面・大阪青年ビエンナーレ(大阪府立現代美術センター・大阪)。1985年、アートフロント50(パルコ心斎橋・大阪)。1987年、実験する現代版画−日本の場合(ウオーカーヒルアートセンター・ソウル )。1993年、International Exhibition of Graphic Art(テジョン文化センター・ 韓国)、TAMA VIVANT 93(多摩美術大学、他・東京)。1997年、思い出のあした(京都市美術館・京都)。2001年、エクステンション・マキシグラフィカ(京都市美術館別館・京都)。2004年、月吠の現代美術展・10周年記念展(奈良市美術館・奈良)。2006年、表面への意志(京都市美術館・京都)。2007年、皐月の荘厳(京都芸術センター・京都)。2008年、TAMA VIVANT 2008(多摩美術大学・東京)。2008年、京都市美術館コレクション展「ふたつで一つ」(京都市美術館・京都)。2014年、垂直の夢・水平の意思−自分の手足を定規にしたら−(京都市美術館別館・京都)。2016年、アートと考古学展「物の声を、土の声を聴け」(京都市文化博物館・京都)。2017年、遊びをせんとや生まれけむ 今村源・日下部一司・三嶽伊紗(徳島県立近代美術館ギャラリー・徳島)等に出品。

 ■中岡真珠美 Masumi Nakaoka

House

68.0×74.0cm カンヴァスに油彩 2001

Between the two

90.0×60.0cm カンヴァスにアクリル絵具、油絵具、樹脂塗料 2021

 

 ■中岡真珠美 コメント  [Artist Statement]

数ある表現方法の中から絵画を選んでから約20年、大学卒業後私は主に風景を描いています。

私が好んで描くのは庭園や砕石場や廃屋など、自然と人工物の関係で成り立っている場所です。共存と支配、再生と破壊、寛容と拒絶。そういった風景に対する感銘とは、人間と自然の間の関係についてのイメージによってもたらされる記憶への圧痕だと私は考えています。抽象と具象の要素による対位法で、その記憶への働きかけが不特定な状態を保ちつつ、自由にそして出来る限り完結にイデアが発揮できる場として風景画を描いています。一方、出品する過去の作品は風景画以前の油彩画で、この度初めて展示します。

■略歴  [Artist Biography]

1978年、京都府生まれ。2004年、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。2004年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催。以降、東京オペラシティアートギャラリー(東京)、INAXギャラリー2(東京)、第一生命南ギャラリー(東京)、アートフロントギャラリー(東京)、gallery seescape(チェンマイ)にて個展を開催。主なグループ展に、2003年、トゥールビヨン(Oギャラリーeyes・大阪)。2004年、神戸アートアニュアル2004-トナリノマド(神戸アートビレッジセンター・神戸)。2005年、第一回倉敷現代美術アート・ビエンナーレ(倉敷市立美術館・岡山)、TAMA VIVANT 2005 美術・そのひろがる輪郭(多摩美術大学・東京、他)。2007年、VOCA2007(上野の森美術館・東京)。2012年、新鋭各賞受賞作家展「New Contemporaries」(京都市立芸術大学ギャラリーアクア・京都)。2014年、DepthOギャラリーeyes・大阪)、震災から20年震災 記憶 美術(BBプラザ美術館・神戸)。2016年、Ngon Lam(フエ大学・ベトナム)Semi(チェンマイ大学ギャラリー・タイ)。2017年、Art Stage Singapore 2017Marina Bay Sands・シンガポール)、Expozite Internationala de Arta Contemporana(サトゥマーレ美術館・ルーマニア)。2019年、開廊20周年記念展「続・絵画劇場」(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■山崎 亨 Toru Yamasaki

Revolver−U

H11.5×W13.5×D11.5cm ポリエステル樹脂、ステンレス、プラスチック 1992

Open

97.1×67.6cm 写真(越前和紙にプリント) 2021

 

 ■山崎 亨 コメント  [Artist Statement]

「光と回転」

私が写真/光画としてあらわす作品は工作物やオブジェを単体、あるいは複数、机上で構成して撮ったものです。遠近とフォーカスの関係、平面性〜イリュージョン、自然光か、人工光か、具体性〜抽象性のバランス等をどうするのか?そうした選択は望むイメージと一緒に制作の中で定められます。

今回の新作[Open]は手前を過去として闇の中にモチーフ(旧作等)を配しています。円柱たちは感情の表現をしています。ドアの向こうに光を欲したのは近年の閉塞状況と無関係ではありません。この種の表現は稀なことではありました。

旧作[Revolver-2]は立体作品を作っていた頃のモノです。水平に軸を持つ樹脂製回転絵画として作られました。支持体はトイレにあるロールペーパーを支えるものと同じです。

私が立体制作をしていたことは現在の写真作品を作る上で前提として必要でした。その立体と写真は合わせ鏡の様な関係とも言えるし、別の捉え方もあるでしょう。今回の新旧並列された展示を私は楽しみにしています。

■略歴  [Artist Biography]

1960年、大阪府生まれ。1982年、大阪芸術大学芸術学部美術科を卒業。1982年、靭画廊(大阪)にて初個展を開催。以降、シティギャラリー(神戸)、オンギャラリー(大阪)、ギャラリービュー(大阪)、ギャラリーKURANUKI(大阪)、サイギャラリー(大阪)、ギャラリーNWハウス(東京)、ギャラリーココ(京都)、信濃橋画廊(大阪)、GALLERYwks.(大阪)等で個展を開催。主なグループ展に、1986年、アート・ナウ '86(兵庫県立近代美術館・神戸)、アート・ブリッジ展(さんちかホール・神戸、ヒモヴィッツ・ソロモン・ギャラリー・カリフォルニア)、アート・フロント“イマージュ装置”(心斎橋パルコ・大阪)。1989年、次代を担う作家たち展(京都府立文化芸術会館・京都)。1990年、脱走する写真−11の新しい表現(水戸芸術館現代美術ギャラリー・茨城)。1992年、彫刻の遠心力−この10年の展開(国立国際美術館・大阪)。1993年 美術の中のかたち―手でみる造形(兵庫県立近代美術館、神戸)。1994年、身体美術感(ハラミュージアムアーク・群馬)、眼の宇宙−かたちをめぐる冒険(兵庫県立近代美術館・神戸)。1995年、済州道プレ・ビエンナーレ'95(アート・センター・韓国)。1996年、美術鑑賞ってなんだろう(芦屋市立美術博物館・兵庫)、ハンド・メイド・オブジェ(滋賀県立近代美術館・滋賀)。2000年、Art Contact(名古屋市民ギャラリー・名古屋)。2019年、COVER W(CAS・大阪)、Depth 2019Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。

 ■大野浩志 Hiroshi Ohno

青の態 1988D3

54.4×72.6cm 紙に鉛筆、アクリル絵具、他 1988

在り方・現れ方 2021-A

H19.7×W19.7×D2.1cm 木に油彩、バーナーで燃焼 2021

 

 ■大野浩志 コメント  [Artist Statement]

33年の時を経て」

今回は「青の態 1988-D3」というタイトルの旧作と最新作「在り方・現れ方 2021-A」を出品した。実に33年の開きがある作品の共演だ。青臭い自分を今更引っ張り出してくることに多少の抵抗はあるが、この二つの作品を並べることで何が見えるのか。私自身、会場でじっくりと見定めたいと思う。年月の経過とともに変化してきた私と変わらずに今も在る私。そしてそれらの私を見つめるもうひとつの視線。美術を「目的」としてきた私から美術を「手立て」として不可知のナニモノカに迫ろうとする私へ。アートシーンにおけるモードを追っていた若い頃の私が、今は自身の内奥のその先にある宇宙を志向している。他者に自身の創作の成果を「見せる」ことを目的とするのではなく、私がアプローチすることがきっかけで「現れ来る」ナニモノカを私自身が凝視するための制作を実践している現在である。

■略歴  [Artist Biography]

1961年、大阪府生まれ。1984年、大阪芸術大学芸術学部工芸学科を卒業。1985年、不二画廊(大阪)にて初個展を開催。以降、大阪府立現代美術センター(大阪)、信濃橋画廊(大阪)、MAT(名古屋)、NCAF'93(名古屋市民ギャラリー・名古屋)、CUBIC GALLERY(大阪)、ソフトマシーン美術館(香川)、CAS(大阪)、Oギャラリーeyes(大阪)Ami-Kanoko(大阪)等で個展を開催。主なグループ展に、1987年、第4 回釜山ビエンナーレ(釜山/韓国)。1990年、いま絵画は OSAKA'90(大阪府立現代美術センター・大阪)。1992 年、アート・ナウ'92(兵庫県立近代美術館・神戸)。1993年、大野浩志・丸山直文 2 人展(MAT・名古屋)。1994年、時間・美術(滋賀県立近代美術館・滋賀)。1996年、NCAF '96(名古屋市民ギャラリー・名古屋)。2012年、コレクション Vol.1(ソフトマシーン美術館・香川)。2015年、コレクション Vol.2(ソフトマシーン美術館・香川)2017年、日韓交流展「モノと精神」(海岸通ギャラリー・CASO・大阪)2018年、日韓交流展「個体―液体の臨界点はまだ発見されていない」(SpaceWilling N Dealing・ソウル)等に出品。

 ■児玉靖枝 Yasue Kodama

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65.2×65.2cm カンヴァスに油彩 2021

気配−桜

130.3×130.3cm カンヴァスに油彩 2005

 

 ■児玉靖枝 コメント  [Artist Statement]

日常の何気ない情景の中にふとたち現れるみずみずしい光景。それが何であるか認識する以前の感覚を絵画として成立させるための形式と重ね合わせようと試みます。物理的な表面が存在しているにもかかわらず、イリュージョンが表面を消し、画面から奥へ、あるいは画面より手前へと空間を広げる。可能な限り画面全体を均質な絵の具の層で一気に描ききることで図と地が等価にあるようにするといった、具象絵画の中の抽象性を際立たせること。それは自身の立っている場所を確認するためでもあり、存在に対するまなざしを確認するためでもあります。

2000年以降、具象に転じてから表現行為の中で心掛けてきました。

2018年から展開している「Asyl―自由領域(何物にも侵されない場所)」。様々な場所で天災人災による喪失を経験する中で存在をみつめ信じられるように、形式論については一旦保留して、ただそのありようと対峙することで超えることに賭けてみるしかなさそうです。

■略歴  [Artist Biography]

1961年、兵庫県生まれ。1986年、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。1986年、アートスペース虹にて、初個展を開催。以降、トアロード画廊(神戸)、石屋町ギャラリー(京都)、ギャラリー21+葉(東京)、東京画廊(東京)、セゾンアートプログラム・ギャラリー(東京)、Oギャラリーeyes(大阪)、MEM(東京)、松原通りギャラリーシルクロ(佐賀)等で、個展を開催。主なグループ展に、1992年、筆あとの誘惑−モネ、栖鳳から現代まで−(京都市美術館・京都)。1994年、VOCA 1994(上野の森美術館・東京 ※以降`96 `97 `98年に出品)、光と影−うつろいの詩学−(広島市立現代美術館・広島)。1995年、視ることのアレゴリー(セゾン美術館・東京)。1996年、水際−日本の現代美術展−(ヨコハマポートサイド ギャラリー・横浜)。1999年、現代日本絵画の展望(東京ステーションギャラリー・東京)。2002年、未来予想図−私の人生☆劇場(兵庫県立美術館・神戸)。2007年、「DIALOGUES PaintersViews on the Museum Collection(滋賀県立近代美術館・滋賀)。2009年、LINK−しなやかな逸脱(兵庫県立美術館・神戸)。2010年、プライマリー・フィールドU: 絵画の現在−七つの〈場〉との対話(神奈川県立近代美術館・神奈川)。2012年、新incubation4「ゆらめきとけゆく」展(京都芸術センター・京都)。2013年、プレイバック・アーティスト・トーク(東京国立近代美術館・東京)、2014年、クインテット−五つ星の作家たち(損保ジャパン東郷青児美術館・東京)。2018年、モネ それからの100年(名古屋市美術館・名古屋、横浜美術館・横浜)。2019年、みつめる−見ることの不思議と向き合う作家たち(群馬県立館林美術館・群馬)。2020年、それぞれのながめ−河合美和、児玉靖枝、増田妃早子、渡辺智子(徳島県立近代美術館・徳島)等に出品。

 

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