エンク・デ・クラマー Enk De Kramer

 

untitled2019-S1

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-S 3

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-M1

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-S 2

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-S 4

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-M4

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-M2

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-M3

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-S 8

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019-S 10

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

untitled2019 S 9

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント等 2019

 

 ■展覧会テキスト[Text]

“何にも寄っていない” はじめてエンク氏の作品を目にして、そんな印象を受けた。

これまでの自分の経験からどんな視点で作品を見ればよいのか、そんな考えと作品を照らし合わせて言葉を模索してみる。しかし彼の作品は言葉にし難く「色んなものの間を行き来している」と口にするのがやっとだった。その解らなさの奥にあるものに興味を持つのと同時に「好みではないのかもしれない」と思った。

後日、このテキストを書くにあたり、作品や図録、過去のDMなどを借りてじっくりと見る機会に恵まれた。過去作から順を追って図録を眺めていると、新しくなるにつれて画面へのアプローチが軽やかになって行くのを感じた。最も新しいもので2019年の作品を目にした時、より軽やかに深く洗練されているように思えた。

作品の要素の一つとして、画面の多くを占める色相がある。その色と筆致に満たされた空間から固有のかたちが浮上し、それ自体が不可視な気配を纏っているようにみえる。その存在感の強さ故に画面の中から向こう側を覗いている様な感覚へと誘われる。深みのある色と表面のテクスチャーから、物質的な壁面や地層の様なものに見えてくる作品もあり、色やかたちが画面上で一つの要素に留まるのではなく、多様な役割を担っている事に気付かされる。

今回展示される作品を見ると、色相が空間として立ち上がる手前の、紙に定着したインクであるという明け透けな状態も容認されているようで、それが画面に軽妙さを与えているのではと感じた。また、彼の作品が開かれた状態を得ることで体現された自然な有り様を感じさせるのは、これまでに捉えた世界の姿を、自らが制作した画面の中からも同様に感じ取り、そこに何が現れるのかを丁寧に汲み取ることで獲得した感覚によるもの(現れ)なのかもしれない。

目の前にある作品を何かに当てはめる事なくただ見つめて感じる。閉塞的に一処に限定されない、主観と客観、見えるものと見えないもの、物質と非物質的なイメージ等、相反している様に思えることも、どれに偏る事なく存在している。そんなエンク氏の作品は、自分の立場とは関係ないとしていた物事さえ、私の生きているこの世界に確かに「在る」のだという事をあらためて気付かせてくれた。

 

川口洋子(美術家)

 ■略歴  [Artist Biography]

1946年、ベルギー生まれ。ベルギーとユーゴスラビアの大学でアートを学び、1969年よりベルギーにて個展を開催。その後、ドイツ、フランス、イタリア、日本等、国内外の展覧会に多数出品。当画廊では2000年より定期的に個展を開催。2004年には名古屋芸術大学の招聘により、特別客員教授としてベルギーより来日、同大学にて公開制作と個展を開催。現在はベルギー/ゲントに滞在。2011年、名古屋市民ギャラリー矢田(愛知)で開催されたファン・デ・ナゴヤ美術展2011「黒へ/黒から」展や、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都)で開催された「日本・ベルギー版画国際交流展」に出品。2012年、日本版画協会主催の第80回記念版画展「Prints Tokyo 2012(東京都美術館・東京)に招待出品。2017年、セントニクラウス市美術館(ベルギー)にて個展を開催。

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