東邦フランチェスカ「あの頃の話をしよう」

 

青春の虫干し

H198.9×W60.0×D12.5cm カセットテープ、タオル掛け、ガラス台 2019

かたむく青春

H45.2×W34.2×D2.0cm カンヴァスにジオラマパウダー 2019

あなたの声を聴きたくて

H45.5×W80.9×D20.3cm 壁に聴診器(サウンドスコープ) 2019

ほとばしる想い(19-01

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

ほとばしる想い(19-02

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

ほとばしる想い(19-03

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

ほとばしる想い(19-04

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

ほとばしる想い(19-05

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

ほとばしる想い(19-06

30.0×22.2cm 紙にグラファイト 2019

オレンジ色の胸騒ぎ

H198.9×W231.0×D121.7cm 防水シート、レコードプレーヤー、他 2019

工芸的な印象の行方

H32.5×W39.5×D4.0cm ダンボールにカラーテープ、造花、他 2019

 

 ■E. E. Jenny(東邦フランチェスカ・代表) コメント  [Artist Statement]

−作品の解説−

 

「青春の虫干し」

この作品は、当時のサウンド(父の青春)が詰まったカセットテープを、湿気等で傷まないよう「虫干し」してみようという発想から生まれた。もちろん本当に効果があるわけもなく、余計にテープが傷みそうな事をやらかしているのだけど、テープに記録されているサウンド以外の音(引出された物の傷みや劣化から発するノイズのようなもの)も聞こえてきそう。

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「かたむく青春」

カンヴァスを支持体に、重力への意識や素材の物質的特性から導き出されたかたち、テクスチャー等で構成された作品。

5年前に祖母の家を訪ねた際、庭に植えられた芝生が美しく印象的だったのを思い出し、緑のジオラマパウダーを素材として採り入れてみた。

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「あなたの声を聴きたくて」

聴診器を壁に差し込み、その場で増幅された音を鑑賞者が体験するというインタラクティヴな作品。アーティストの藤本由紀夫(1950−)的な発想。

壁の向こうに見えない先の彼(彼女)に思いを馳せて耳をすませば、きっとあの人の声が聞こえるはず…。

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「ほとばしる想い」

写真(ファッション誌の切抜き)とグラファイトを使って、感情をむき出しにしたような筆致で描いた作品。 会場に表現主義的な荒々しいタッチの絵がほしくて、メンバーの夜行秀典に制作を依頼。

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「オレンジ色の胸騒ぎ」

他の作品と違って、画廊との共同制作による作品。インスタレーション的要素や、レディメイド、サウンド等を取り入れ、個人的嗜好でチョイスした素材を組み合わせてみた。

防水シートを見ていると、何故かドキドキがとまらない。

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「工芸的な印象の行方」

この作品にみられるダンボールの空虚な素材感、不連続な構造体、埋め込まれた植物のイメージは、アーティストの日比野克彦、山本富章、中川佳宣の作品を参照。

−展覧会の舞台裏−

 

今回の展覧会はメンバーと共に画廊で打合せを行い、話し合われた中で気になるワードを選択し、展覧会の方向性を考えるかたちとなった。

その結果「80年代」に関心が集まり、展覧会のテーマとして設けられたのだが、当時の事を雑誌やネットで調べたり、親に尋ねてみると、その頃母がテレビっ子だったらしく、同世代で話題になったドラマが「3B組金八先生」や「ふぞろいの林檎たち」「スクール☆ウォーズ」「毎度おさわがせします」「男女7人夏物語」等々、これらは皆10代の青年や大人達の心の揺れ動きを捉えた「青春」が描かれていたという。

当時の「青春」とは、ドラマの筋書きを見る限り、優秀な人もダメな人も「全力」で「真剣」に生きる人が中心になって「感動」を生むといった内容だ。

昨年、国立国際美術館で見た80年代アートの展覧会も、作品から「全力」で「真剣」さが窺えたって言ったら、それってちょっと赤面もので、これを読んでる人も困惑しそうだけど、私的に悪い気はしなかったし、あと「感動」さえあればと思ったけれど、これに関しては個人差もあるだろうし、知らなかった事もいっぱいあって勉強にもなったけれど、これまで私達(東邦フランチェスカ)が主軸のテーマとしてきた“不安”や“矛盾”、夢でみた“不条理”とは別の角度で「80年代」のイメージを作品に導入しようとしたら、それなりに頭を抱えてしまって、あらためて80年代の「美術手帖」を参照にしようと思ったら、やたらと横文字(カタカナ)が登場して、今でいう“意識高い系”のビジネス用語にも近い感じで、英語やフランス語、ドイツ語をカタカナ読みした単語や専門用語なんか使われると、ある程度の知識や情報がないと理解しがたくて、眉間にシワを寄せながら読みはじめたら、あっという間に展覧会が目前まで迫っていて、画廊からの急なオファーにもめげずに制作に取り組んだら「青春」してしまった次第で、いまでも頭の中でワーグナーの曲がパンパカと鳴り響いている。

 ■略歴  [Artist Biography]

2009年に結成。メンバーは匿名で活動し、2010年に開催された「ENK DE KRAMERと東邦フランチェスカ」展(Oギャラリーeyes・大阪)では、戦争や歴史画等を対象とした写真や図版を下敷きにしたドローイング作品を発表。様々な歴史や政治的背景を画面上で扱いながらも、それらを抑え込むように上から描画を施し、情報の真意を実体として捉えることが出来ない不安や不信感を感覚的に描き重ねた作品を制作。同年、「未来は僕らの手の中」展(Oギャラリーeyes・大阪)に出品された作品は、胎児の写真を用いて、命の営みとそれを取り囲む痛みや希望が混在する世界をイメージして描いた作品を発表。2011年、「The Galaxy−パラノイア銀河」展(Oギャラリーeyes・大阪)に出品。2012年、「KICKS」展(Oギャラリーeyes・大阪)にて、米軍機MV22(オスプレイ)と山口県岩国市でのデモ集会の集合場所(地図)を描いたドローイング作品を出品。2014年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展「E.E.Jenny Selection」を開催。E.E.Jenny(東邦フランチェスカ・代表)の過去の経験、記憶の中から特定のシチュエーションを選択し、そこからイメージされたものを画廊の事務所内にある物品(文具や工具、雑誌、地図、ラジオ受信機等)を用いてインスタレーションを行う。2017年、個展「いつまでもずっと忘れずに」を開催。マルセル・デュシャン作品「泉」の発表から100年を迎える年に、簡易便器(おまる)と振動スピーカーを組み合わせた作品を発表。

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