エンク・デ・クラマー Enk De Kramer

 

untitled2018-M2

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-M3

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-M4

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-S10

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-S3

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-M1

34.0×50.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-S5

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-S2

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

untitled2018-S8

25.0×34.0cm カーボランダム、ドライポイント、他 2018

 

 ■展覧会テキスト[Text]

紙やキャンバスなどの平面上に空間を仮定する。そのなかに人は物語をつくり、さまざまなことを考えてきた。絵の基本的なことではあるけれど、意外とそれは忘れられているように思う。エンク・デ・クラマーの作品は、そうした原点にわたしたちを立ち返らせてくれる。

決して饒舌な絵ではないが、寡黙な絵でもない。どこまでも謎めいている。赤や青、黒などの深い奥行きを暗示する色彩、そこへ漂う線の連なりは画面を探る視線の震えのようだ。平面上の画像が意味付けを拒むかのような難解さを有するのに対して、作品の持つ豊かな質感は明快である。紙という物質が作家の手を介して変容を遂げたことがよくわかる。

彼は表現の方法として版画を選択しているが、版画の特性でもある複製や均質な再現に関心はない。むしろ刷りの制作過程が持つ素材へのアプローチの仕方において、彼はこの表現を選んだのだと思われる。実際、素材や技法に対する感覚や技術は並みのものではない。ドライポイント、カーボランダム、モノタイプ等の多様な版画技法を駆使する一方で、コラージュや鉛筆、絵具による描出がなされ、版という間接的手法と描画の直接的なアプローチは複雑に絡まりあう。そうした関わり方から、視触覚的な感覚を喚起させる独特の空間を生じさせる。

いわゆる線遠近法に代表されるような視覚優位の空間においては、視覚以外の感覚は捨象されることが多い。しかし、彼の作品が具えている空間には感覚のすべてが内包されている。素材と深く関わりながらものをつくる態度が、物質を強く裏付けるためであろう。もちろんこれは彼に限った話ではなく、美術の長い歴史のなかで人々が培ってきたものである。

ただ、それはいつしか多くの人に忘れ去られてしまった。そのなかにあって、いまも大切に覚えているひとりが彼である。それゆえにエンク・デ・クラマーの作品は、人の感覚と謎めいた魅力を放ちながら、絵画空間の豊かさを顕示し続けるのだろう。

 

神頭優太(美術家、京都大学大学院医学研究科高次脳科学講座神経生物学分野技術補佐員)

 ■略歴  [Artist Biography]

1946年、ベルギー生まれ。ベルギーとユーゴスラビアの大学でアートを学び、1969年よりベルギーにて個展を開催。その後、ドイツ、フランス、イタリア、日本等、国内外の展覧会に多数出品。当画廊では2000年より定期的に個展を開催。2004年には名古屋芸術大学の招聘により、特別客員教授としてベルギーより来日、同大学にて公開制作と個展を開催。現在はベルギー/ゲントに滞在。2011年、名古屋市民ギャラリー矢田(愛知)で開催されたファン・デ・ナゴヤ美術展2011「黒へ/黒から」展や、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都)で開催された「日本・ベルギー版画国際交流展」に出品。2012年、日本版画協会主催の第80回記念版画展「Prints Tokyo 2012(東京都美術館・東京)に招待出品。2017年、セントニクラウス市美術館(ベルギー)にて個展を開催。

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