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●Backbone of faith(バックボーン オブ フェイス) |
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■展覧会趣旨
[Purpose of Exhibition] |
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アートという概念が生まれる以前より、人は拠り所とされるものを求めて信仰をかたちにしてきました。先史時代における壁画から、建築、絵画、彫刻に到るまで、多くの宗教的思想や物語が題材とされてきましたが、近代以降、宗教から独立した表現としてアートが広く定着するようになった現在、いまもなお宗教における社会的影響や個人においての信仰が、様々な媒体を通してアート作品に反映され続けています。それはキリスト教やイスラム教、仏教等といった多様な宗派における教義を表顕するといった内容に留まらず、自然の壮大なちからに対する共鳴や神秘体験、日常の中で感じ取れるささやかな気配といったものまで、それらを信仰の対象としながら制作する作家も少なくありません。また、特定の宗教を批判あるいは揶揄したとされる作品が、展覧会会場にて出品差止めの勧告を受けるなど、アートの現場で宗教に関わる問題は絶えず論議の的とされています。本展は、宗教的背景と関わりながら制作する作家を中心に、どのように現代の社会と向き合いながら信仰と制作に携わっているのか、その様相に迫ります。 Oギャラリーeyes(O Gallery co.,ltd.) |
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■展覧会テキスト[Text] |
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悦ばしき芸術―Backbone
of faith 平田剛志(美術批評) いま、信仰(faith)は在るだろうか。現代、宗教は世界各地で紛争や事件の原因となり、新たな対立を生んでいる。一方、かつて暮らしの中にあった信仰心は薄れ、人々は経済や欲望に支配された物神崇拝の時代を生きている。いま、信仰は在るだろうか。
本展「Backbone
of faith」は、キリスト教のカトリック、プロテスタントおよび仏教(真言宗)を信仰し制作活動を行う寺脇さやか、長谷川直美、三好温人の3人展である。寺脇は日本画を専攻した後、現在は油彩と顔彩を用いて人知や意図を越えた形象の顕われを探究している。長谷川は、世界各地を旅した経験から得た「平和」な光景を描いてきたが、本展では新たな試みである抽象絵画を描く。三好は、これまで仏教思想をもとにした曼荼羅絵画やインスタレーションを発表したが、本展では金魚を主題とした絵画を通じて、日常に偏在する聖性が表象される。
以上のように3人の作品は信仰を背景としている。だが、本展は宗教画の展覧会ではない。教化、伝道を目的ともしていないし、信仰、祈りの対象として制作された作品でもない。3人の信仰に至る経緯については詳述する余裕がないが、画家の信仰は作品の背後にあり、画面を見るだけでは見えない。 だが、かつて絵画の前面に信仰があった。そもそも、芸術は魔術や宗教の礼拝や儀式に用いられることから始まった。その痕跡は現在も教会や寺院などに行けば見ることができる。この時代、芸術はただ在るだけでよかった。だが、近代になると芸術は教会から新たな「神殿」である美術館へと居場所を変え、「在る」ことに意味を求められるようになった。ヴァルター・ベンヤミンが指摘したように、芸術は礼拝的価値から展示的価値へと移行したのだ。 芸術は宗教から分離し、複製技術時代の芸術作品となった。そして、芸術からアウラが消え、「神」と「絵画」は死を宣告された。哲学者フリードリッヒ・ニーチェは『悦ばしき知識』(1882)で「神は死んだ」と書き、19世紀の写真術発明を受けてフランスの画家ポール・ドラローシュは「今日を最後に絵画は死んだ」と呟いた。その後、世界は「科学」と「技術」が支配的になったことを私たちはよく知っている。 だが、「神」と「絵画」は死を宣告された後に復活を遂げ今に至る。かつてより信仰と絵画の存在感は薄れてはいるが、どちらも人類の歴史でもあり、容易に死ぬものではなかった。その理由は、信仰も絵画も答えなき、見えない問いに向き合う根源的な営みだからだろう。そこには先人の知恵と技術を学び、対話する超越的な時間と悦びが含まれている。その持続する歴史性こそ、複製技術時代の芸術作品にはないものだ。本展の3作家の作品にも信仰という見えない摂理が流れているだろう。芸術と信仰の邂逅から生まれる絵画とはどのようなヴィジョンなのか。いま、絵画を前に考えたい。 |
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●寺脇さやか Sayaka Terawaki |
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ミルトスの林 100.0×65.2cm カンヴァスに油彩 2018 |
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華麗なる玉座 24.3×33.4cm カンヴァスに油彩 2018 |
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わたしの心をときめかす 45.5×45.5cm カンヴァスに油彩 2018 |
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時を待つ1 27.3×27.3cm 麻紙に岩絵具 2017 |
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時を待つ2 27.3×27.3cm 麻紙に岩絵具 2017 |
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月明かり 27.3×27.3cm 麻紙に岩絵具 2017 |
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月や星が光るうちに 24.3×33.4cm カンヴァスに油彩 2018 |
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第三の日 33.4×24.3cm カンヴァスに油彩 2018 |
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■寺脇さやか コメント
[Artist Statement] |
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私の制作の原点は教会での写生から始まりました。そして、いつでも帰る前にはお聖堂でお祈りします。こうした繰り返しの中で制作する事と祈る事は自然と繋がっていきました。 制作中の心の中は教会内にいる時と似たものになります。それは決して綺麗な物だけではありません、作品を描き出す事は全ての告白だとも思っています。嘘偽りなく作品と向き合う事で、自身の意図したものを超えた存在が絵には現れると信じています。 |
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■略歴
[Artist Biography] |
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1984年、大阪府生まれ。2007年、成安造形大学造形美術科日本画クラス卒業。2009年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程日本画専攻修了。2010年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展を開催。※以降、同ギャラリーにて2016年まで毎年開催。主なグループ展に、2006年、第32回京都春季創画展(京都市美術館・京都)、第33回創画展(東京都美術館・東京、京都市美術館・京都)。2007年、第34回創画展(東京都美術館・東京、京都市美術館・京都)。2011年、les signes(Oギャラリーeyes・大阪)。2012年、第4回京都日本画新展(美術館「えき」KYOTO・京都)、祇園祭によせて〜扇子祭(Art Space-MEISEI・京都)、京都芸大日本画の現在(Art
Space-MEISEI・京都)。2013年、Semantic
portrait(Oギャラリーeyes・大阪)。2014年、第1回続日本画新展(美術館「えき」KYOTO・京都)、WONDER SEEDS 2014(トーキョーワンダーサイト渋谷・東京)、成安日本画卒業生展(成安造形大学内ギャラリー・滋賀)、The 9th 100 Artists Exhibition(Ouchi Gallery・ニューヨーク)。2015年、第2回続日本画新展(美術館「えき」KYOTO 京都)、華やぎ展(SYRTEMA GALALLERY・ 大阪)、outside and the inside W(Oギャラリーeyes・大阪)。2016年、LAKE
CURRENT-湖派展(堀川御池ギャラリー・京都)、トゥールビヨン14(Oギャラリーeyes・大阪)、今-toki-展(ギャラリーマロニエ・京都)。2017年、京都府新鋭選抜展2017-Kyoto Art for Tomorrow-(京都文化博物館・京都)、トゥールビヨン0(Oギャラリーeyes・大阪)、DOJIMA RIVER AWARDS 2017 -NUDE-(堂島リバーフォーラム・大阪)。2018年、続「京都 日本画新展」×ギャラリーカフェ京都茶寮(ギャラリーカフェ京都茶寮・京都)、ART MEETS WINTER(月ヶ瀬堺町店・京都)等に出品。 |
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●長谷川直美 Naomi Hasegawa |
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オキナワ 72.7×72.7cm カンヴァスに油彩 2018 |
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カムナビ 53.0×53.0cm カンヴァスに油彩 2018 |
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御嶽(ウタキ) 116.7×80.3cm カンヴァスに油彩 2017 |
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見えない世界に生きる基−guilty 54.0×81.0cm雑紙にパステル、木炭2016 |
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■長谷川直美 コメント
[Artist Statement] |
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制作にも生きる目的にも悩んでいた学生時代のこと、空の美しさに救いを得たような気持ちになり、神の存在と祝福を感じました。それを親が子に伝える愛のように、絵画を通して表現出来ればと思いました。 その後、導かれたかのようにニューヨーク州でのピースウォーク(反戦、平和を願っての行進)と出会い、平和というものはそれをつくる意志がなければ失われてしまうことを学びました。 そうして戦争と平和について考えるようになった頃、はじめて沖縄を訪問した際、その土地から感じられたものや沖縄戦での出来事、米軍基地といった現状を知ったことで、未だ戦争の傷から生々しく血が流れ続けていることを感じました。 沖縄にある米軍基地は、愛から最も遠く離れた戦争の拠点であり、その存在に抗う事が出来ない国や私自身の在り方を考えさせられました。 聖書に「互いに愛し合いなさい」と記されていますが、沖縄への想いを描くことで、戦争と平和、人が愛し合いつながる事を考える契機になればと願って制作しています。 |
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■略歴
[Artist Biography] |
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1970年、愛知県生まれ。1994年、名古屋芸術大学美術学部絵画科洋画専攻版画コース卒業。1995年、名古屋芸術大学美術学部絵画科版画コース研究生修了。1996年、ギャラリーサンジミニアーノ(大阪)にて初個展を開催。以降、ガレリア・フィナルテ(名古屋)、ギャラリーAPA F2(名古屋)、ギャラリーこうの(三重)、ギャラリーA.C.S.(名古屋)、Oギャラリー(東京)、ギャラリーすずき(京都)、Oギャラリーeyes(大阪)、OギャラリーUP・S(東京)にて個展を開催。主なグループ展に、2000年、鼎(Gallery HIRAWATA・藤沢)、版表現・拡がる表象2000(愛知県美術館ギャラリー・名古屋)、00-01展(Gallery HIRAWATA・藤沢)。2001年、版画作家たちのドローイング展(ギャラリーA.C.S.・名古屋)。2003年、International Workshop for Visual
Artists in REMISEN−BRANDE(REMISEN・デンマーク)。2004年、 After Remisen
♯5(Art&Design Center・愛知)。2007年、版の方法論〜京都と名古屋から〜(CASO・大阪)、トゥールビヨン5(Oギャラリーeyes・大阪)、版の方法論 #4;そして、これから(Art&Design Center・愛知)。2008年、peace nine 2008展(Art&Design Center・名古屋)※以降、`17まで毎年出品。2009年、The
6th International Workshop DRAWING in Hannover・Ars terra(Stephansstift・ドイツ)。2010年、愛知アートの森・堀川プロジェクト(東陽倉庫テナントビル・名古屋)。2013年、No Reason;Have Result(Subhashok The Arts
centre・タイ)。2014年、International Art Workshop for Visual Artists in Gludsted(デンマーク)。2015年、After Denmark#3(Art&Design Center・愛知)、反原発美術館ライブペインティング(反原発テント・経済産業省前・東京)。2016年、第3回碧南ビエンナーレ(藤井達吉現代美術館・愛知)、Lithograph:lighter but heavier 軽くもあり重くもある(GALLERY blanka・名古屋)。2017年、トゥールビヨン 0(Oギャラリーeyes・大阪)等に出品。 |
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●三好温人 Atsuhito Miyoshi |
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continuum4 162.0×162.0cm 雲肌麻紙に岩絵具 2018 |
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MANDALA 91.0×72.7cm 新聞紙、和紙にチャコールペンシル、岩絵具 2018 |
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continuum3 100.0×72.7cm 雲肌麻紙に岩絵具 2018 |
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continuum1 27.3×22.0cm 雲肌麻紙に岩絵具 2018 |
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■三好温人 コメント
[Artist Statement] |
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私は寺院の息子として生まれた。仏に手を合わせることを、自然なこととして両親から教わり行ってきた。自分が絵を描くことを学ぶようになって、自分の内面と向き合うようになった。そこで自分の出自と信仰についても考えるようになった。私はいつも、本当の自分がどこにあるのかわからなくなる。そんな時に、祈るような気持ちになる。本当の自分はどこか。そんなものなどないのだろうか。絵を描いていても、どこか取り繕っているような気もする。それでも、モチーフや絵の具を通じて、何か心の中にある本当が、行為として残って欲しい。 |
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■略歴
[Artist Biography] |
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1989年、愛媛県生まれ。2012年、京都嵯峨芸術大学芸術学部造形学科日本画分野卒業。現在、嵯峨美術大学大学院芸術研究科造形絵画分野在籍。主なグループ展に、2016 年、FACE2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展(損保ジャパン日本興亜美術館・東京)、『守破離-shu・ha・ri-』(京都文化博物館・京都)。2017年、日本画四人展‐生動‐(Art Space‐MEISEI・京都)等に出品。 |
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