東邦フランチェスカ 「いつまでもずっと忘れずに」

 

夏の夢のハーモニー

h22.5×d21.0×w36.0cm おまる(ホーロー)、振動スピーカー、他 2017

思い出がいっぱい

h55.5×d14.5×w43.0cm スクールバッグ(ナイロン、他) 2017

 

 ■E. E. Jenny(東邦フランチェスカ・代表) コメント  [Artist Statement]

先月旅先にて、古民家をリノベーションした感じのよい民宿に宿泊したのですが、その日の夜、 悍ましいことに「便器」になる夢を見ました。

正確には、目の前に人のお尻のようなものがあって、そこから黒い塊がゆっくりと落ちてくるという夢だったのですが、その塊が落ちてきたと同時に目の前が暗転し、しばらく暗い状態が続くなか、水の流れる音が聞こえてきました。

朝、目が覚めて最初に思ったのは、この手の夢を見たあとは自分が“お漏らし”しているという幼少期の経験から、とっさに布団のシーツを確認したのですが、特に濡れている痕跡もなく、安堵でため息と共にそのまま二度寝に突入。

あらためて目覚めの時を迎え、ぼーっと辺りを見渡すと、テレビを置いてある場所が実は床の間という事に気付きました。

夢の影響もあってか、床の間に便器があったなら…とシュールな情景を想像しながら着替えをすませ、旅館をあとに。

最寄りの駅に向かいながら思い出したのが、私が女子高に通い出して間もない頃、マルセル・デュシャンの「泉」という作品を何かのウェブサイトで目にし、既製品そのものがアートになるという驚きもさることながら、排泄物を取り込む便器に「泉」という清涼感のあるタイトルを付けるなんて、ネーミングセンスの良さに感動しました。

当時の記憶や夢での出来事など、思いを巡らせているうちに幾つかの単語や映像が浮かんできたのですが、そうした流れを経て“おまる”“水の音(振動スピーカー)”等を組み合わせた作品「夏の夢のハーモニー」の完成へと到ります。

デュシャンの「泉」という作品には「リチャード・マット事件」やその後のエピソードをみても、皮肉や制度批判といった様々な仕掛け、戦略が施されていますが、私の作品はそれとは無縁の(かといって無関係ではない)、古き良き日本家屋の床の間に、小さく飾れるすずやかなものをかたちに出来ればと思い制作しました。

暑い最中ではありますが、会場でささやかな涼をとって頂ければ嬉しいです。

 ■略歴  [Artist Biography]

2009年に結成。メンバーは匿名で活動し、2010年に開催された「ENK DE KRAMERと東邦フランチェスカ」展(Oギャラリーeyes・大阪)では、戦争や歴史画等を対象とした写真や図版を下敷きにしたドローイング作品を発表。様々な歴史や政治的背景を画面上で扱いながらも、それらを抑え込むように上から描画を施し、情報の真意を実体として捉えることが出来ない不安や不信感を感覚的に描き重ねた作品を制作。同年、「未来は僕らの手の中」展(Oギャラリーeyes・大阪)に出品された作品は、胎児の写真を用いて、命の営みとそれを取り囲む痛みや希望が混在する世界をイメージして描いた作品を発表。2011年、「The Galaxy−パラノイア銀河」展(Oギャラリーeyes・大阪)に出品。2012年、「KICKS」展(Oギャラリーeyes・大阪)にて、米軍機MV22(オスプレイ)と山口県岩国市でのデモ集会の集合場所(地図)を描いたドローイング作品を出品。2014年、Oギャラリーeyes(大阪)にて初個展「E.E. Jenny Selection」を開催。E.E. Jenny(東邦フランチェスカ・代表)の過去の経験、記憶の中から特定のシチュエーショを選択し、そこからイメージされたものを画廊の事務所内にある物品(文具や工具、雑誌、地図、ラジオ受信機等)を用いてインスタレーションを行う。

他、Oギャラリーeyes(大阪)にて、展覧会「Enigmatic behavior なんで年寄って真夏に熱いお茶を好んで飲むの?」(2016年)、「DrawingExposed essence 2017 ガ〇ダムを描く」(2017年)を企画する。

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