松本良太 Ryota Matsumoto

 

受け口

13.1×19.2cm ケント紙に色鉛筆 2016

アンダーザシーアンダーザシー

108.6×84.0cm ケント紙に色鉛筆 2016

コールドスリープ

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2017

ニルヴァーナーズピクニック

108.6×84.0cm ケント紙に色鉛筆 2017

ビニール袋

19.7×13.2cm ケント紙に色鉛筆 2016

「一度持ち帰って検討します」

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2016

瓦マン、朝日を目指して42,195km

54.3×84.0cm ケント紙に色鉛筆 2016

明日のストレッチ

54.3×84.0cm ケント紙に色鉛筆 2016

ネイキッド

19.7×13.2cm ケント紙に色鉛筆 2016

イケメン

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2016

 

 ■松本良太 コメント  [Artist Statement]

「悪人、西の海に沈む」

怪我をして入院をした。

病院の寝間着と無機質な壁は、夏から秋に季節が変わる繊細な肌感覚をいとも簡単に奪っていった。治る怪我なので、「悲劇の病人」を気取ったとしても、悲哀もなく。ただ、伸び散らかした髪の毛を切る許可と、かゆくて仕方がない点滴を抜く許可を待ちながら、長い一日を黙々とこなしていく。一人ではトイレにも行けず、隣の病室からは、おじいさんの悲痛な叫び声が聞こえる。お見舞いにきてくれた友人達が楽しそうに去っていくのを見送りながら、明日のことを憂いていた。仕事もやめた…。

まともに歩けるようになるまで約半年。実家で自堕落な生活を送り、豊満になった体をのっそりと起こした頃には、皮肉にも今の僕にはまぶしすぎる、春の新緑の景色が待ってくれていた。とにかく。人の感情がわかりすぎてしまってまぶしい。これまで蓋をして、見ないようにしていた、自分の弱く柔らかい部位が、腰回りにしっかりと蓄えた脂肪のように肥大していた。弱った心と体に必要以上に、他人の感情が自分の輪郭を突き破って流れ込んでくる。朝ふと鏡を見ると、しょぼくれたおじさんが僕を見つめていた。初見である。本当ははっきりとした強い自分が欲しかったはずだ、欲しかったという単純な表現では救いきれないほど渇望していたはずなのに。社会への承認欲求を満たしに満たす為に、絵を描いていたはずだった。そのはずが!?何だ。著しく鋭利さを欠いた、この情けない顔の中年の男は!

すっかり絵なんか描けなくなっていたのだった。

リハビリ中。階段から滑り落ちたことがあった。底なし穴に吸い込まれそうな恐怖を味わいながら、でこぼこのシュプールをそりなしで滑りきったそのドン突きで。

泣きそうになりながらお尻をさすり、松葉杖でなんとか立ち上がったその刹那、手の下に、不思議なやわらかい感触があった。ただの血の感触だったかもしれない。

でもそれは、直島で触れた土の感触に似ていた。瑞浪の山で焚いた窯の温度にも似ていて、個が埋没した先にもかすかに希望を見た気がした。自己実現をぽきりと折られて、劣等感にまみれ地を這うような生活の後、立ち上がった、その手元には、いつもの色鉛筆があるわけで。スクラップアンドビルドこうしてまた絵を描き繰り返していく。

 ■略歴  [Artist Biography]

1986 奈良県生まれ

2007 大阪芸術大学付属美術専門学校美術工芸学科プリントメイキング

専攻卒業

2009 京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画専攻卒業

2015 多治見市陶磁器意匠研究所デザインコース修了

 

・個展

2010 Oギャラリーeyes(大阪)

2011 Oギャラリーeyes(大阪)

2012 Oギャラリーeyes(大阪)

2014 Oギャラリーeyes(大阪)

 

・グループ展

2005 企画イベントφ-phi(カフェバーオドリコ・大阪)

2006 グループ展 HYBRID(ギャラリー光陽堂・大阪)

2009 The extracted element 2Oギャラリーeyes・大阪)

2010 Kind of the ironyOギャラリーeyes・大阪)

2012 KICKSOギャラリーeyes・大阪)

2012 万国モナリザ大博覧会(鞆の津ミュージアム・広島)

2013 Semantic PortraitOギャラリーeyes・大阪)

2014  Value added−フロクノミリョク(Oギャラリーeyes・大阪)

2014 だいどころ(設置型ギャラリー・香川)

2014 10cm UNLIMITED(岐阜県現代陶芸美術館・岐阜)

2015 版画のニュースタンダード(京都精華大学・京都)

2015 outside and the inside 4Oギャラリーeyes・大阪)

2015 架設 2015 第一期『軽妙な解答』(京都精華大学・京都)

2016 一年後展(陶林春窯・岐阜)

2016 百花繚乱手技の祭典in湯浅(湯浅地区・和歌山)

2016 21世紀の茶会(金沢中日文化センタースタジオ・石川)

2016 大阪美術専門学校 創立35周年記念展(大阪美術専門学校・大阪)

2017 DrawingExposed essence 2017 「ガ○ダムを描く」

Oギャラリーeyes・大阪)

 

・参考文献

 酒井千穂:「art scape2010815日号(レビュー)

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