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●俵萌子とENK DE KRAMER |
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■展覧会テキスト[Text] |
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二人の作品には、明るい昼間の空間を一枚めくると、その奥に果てのない深い淵を覗き込む様な怖さを感じます。 例えば夜、就寝前の布団の中で、流れ続ける山奥の滝の水音を想像し、自分がそこに居ることがあり得ない時刻、場所が同時に存在していることを想います。 それを細かくイメージした時、私のなかで怖さと共に嬉しさや空白が満たされる感覚があります。 視覚や言葉での認識が無くても、そこに在り続ける世界、これを想像して感じる事は、社会の中に埋没していきがちな私たちにとって重要な働きを持つのではないか、二人の作品にはそういった体験を引き起こす力を感じさせられます。 俵萌子の作品からは、時を遥かに遡ってこの星の原初的な光景、不可視な力の躍動、そして、果てしない時間の流れによって、それらの表層に私達が辛うじて存在しているようなイメージを想起させます。必然的な線描の流れの美しさ、その流動的な光景や力の働きは、地下水脈の様に奥深くで流れ続けているもの、生物の内部で潜在的に働き続けているもの、今の私たちの生活の中では感じにくい、しかし確かにそこにあり続けるものとして、強い存在感を持って迫って来るのです。 エンク・デ・クラマーの作品からは、あるひとつの部屋で脈々と流れ続ける時間、不意に動き出す存在、それらを小さな穴からこっそり覗き見ているような印象を受けます。人間の生活の一部であったものが、ひとりでに変容し、動き出し、既存の物から逸脱していく様を観察するような魅力を感じます。そして強いコントラストを感じる空間は、覗き見る感覚と共に、建物の陰から外側を眺めるような印象を喚起させ、見ている自分自身をも空間の一部に含まれていくような感覚を覚えます。 現代の生活では、日常的に視覚に頼り過ぎ、何となく厚みの無い情報が多く、なにか表面の部分で上滑りしているような印象を抱いている方も多いのかもしれません。 この展覧会を鑑賞した時、私達の日常の表層的な部分に新たな奥行きが備わり、普段の生活に小さな風穴が開いたならば、少し奥まで覗いて見るのも良いのではないでしょうか。何かをきっかけにして自分だけの世界を広げて行く事、それは凄く素敵な事だと思います。
小川直樹(美術家) |
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●俵萌子 Moeko Tawara |
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drawing(no.1〜no.40) 21.0×29.7cm×40枚 紙に木炭、コンテ 2015 |
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drawing(no.18) 21.0×29.7cm紙に木炭、コンテ2015 |
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drawing(no.19) 21.0×29.7cm 紙に木炭、コンテ 2015 |
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drawing(no.20) 21.0×29.7cm 紙に木炭、コンテ 2015 |
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drawing(no.21) 21.0×29.7cm 紙に木炭、コンテ 2015 |
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drawing(no.22) 21.0×29.7cm 紙に木炭、コンテ 2015 |
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drawing(no.23) 21.0×29.7cm 紙に木炭、コンテ 2015 |
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無題(16-01) 22.0×27.3cm カンヴァスに油彩 2016 |
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無題(15-02) 14.0×18.0cm カンヴァスに油彩 2015 |
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無題(15-01) 22.7×22.7cm カンヴァスに油彩 2015 |
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■俵萌子
略歴 [Artist
Biography] |
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1978年、静岡県生まれ。2001年、大阪教育大学教養学科芸術専攻美術コースを卒業。2005年、Gallery H.O.T(大阪)にて初個展を開催。以降、Oギャラリーeyes(大阪)、Oギャラリー(東京)ギャラリーαM(東京)、GALLERY HASHIMOTO(東京)にて個展を開催。主なグループ展に、2005年、シェル美術賞展(代官山ヒルサイドフォーラム・東京)にて「尾崎信一郎審査員賞」を受賞。2006年、エラン(Oギャラリーeyes・大阪)。2007年、Drawing−Exposed
essence 07(Oギャラリーeyes・大阪)。2008 VOCA展 2008 -新しい平面の作家たち-(上野の森美術館・東京)。2009年、Absolute basis 俵萌子と細田聡子の場合(Oギャラリーeyes・大阪)。2010年、トーキョーワンダーウォール公募2010(東京都現代美術館・東京)。2013年、FACE 2013損保ジャパン美術賞展(損保ジャパン東郷青児美術館・東京)に出品。 |
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●エンク デ クラマー Enk De Krame |
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untitled(15-M9) 25.0×34.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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untitled(15-M2) 25.0×34.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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untitled(15-M8) 25.0×34.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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untitled(15-L1) 34.3×50.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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untitled(15-L5) 34.3×50.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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untitled(15-M3) 25.0×34.0cm 紙にカーボランダム、ドライポイント等 2015 |
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■エンク
デ クラマー 略歴
[Artist Biography] |
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1946年、ベルギー生まれ。ベルギーとユーゴスラビアの大学でアートを学び、1969年よりベルギーにて個展を開催。その後、ドイツ、フランス、イタリア、日本等、国内外の展覧会に多数出品。当画廊では2000年より定期的に個展を開催。2004年には名古屋芸術大学の招聘により、特別客員教授としてベルギーより来日、同大学にて公開制作と個展を開催。現在はベルギー/ゲントに滞在。2011年、名古屋市民ギャラリー矢田(愛知)で開催されたファン・デ・ナゴヤ美術展2011「黒へ/黒から」展や、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都)で開催された「日本・ベルギー版画国際交流展」に出品。2012年、日本版画協会主催の第80回記念版画展「Prints Tokyo 2012」(東京都美術館・東京)に招待出品。他、数多くの個展、グループ展に参加。 |
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