松本良太 Ryota Matsumoto

 

ガラスの宇宙船

5.2×D6.4×H2.3cm 珪石に色鉛筆 2014

武士

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2014

無縁仏に捧げる茶碗

14.5×D14.5×H72cm 陶器 2014

デルタX・Y・Z(壁)

11.0×D9.6×H9.6cmケント紙に色鉛筆2014

ほぼ土。でも、ちょっと茶碗(床)

17.5×D17.5×H6.5cm 土 2014

宇宙服とZipRock

17.7×20.3cm ケント紙に色鉛筆 、食品保存バッグ 2014

宇宙服とZipRock (部分)

84.0×108.6cm ケント紙に色鉛筆 2014

108.6×84.0cm ケント紙に色鉛筆 2014

メタモル大谷吉継(上から)

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2014

メタモル大谷吉継(横から)

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2014

日和見で移り気な先祖の為に

84.0×54.3cm ケント紙に色鉛筆 2014

 

 ■松本良太 コメント  [Artist Statement]

多治見市から県道66号を通って、瑞浪市へ向かう。ときおりノイズのまざるラジオは、あいも変わらずどうでも良い情報を垂れ流していて、雲一つない晴天は逆に僕の冴えない頭を重たくさせる。どんぶり会館を横目に愛宕橋を渡ると急に視界が開けて、恵那地方の山々を近景に遠く長野県と岐阜県をまたぐ標高3067mの山、御岳山が美しい雪化粧を帯びてそびえ立っている。走っても、走ってもピントがぼやけた無限遠のその先の御岳山は、軽トラックの窓ガラスのパノラマに近づくことはなく、そのさまが昼下がりの寝ぼけた頭をよけい重くさせるのだが、登山が趣味でもない東濃地方にも縁のない僕にとって、御岳山とのそれがちょうどよい距離感なのかもしれないと思った。

 

昨年の4月から住み始めたアパートを出ることになった。今住んでいるアパートは特筆することも無い、ごくごく普通のぼろアパートだが、あえて特徴を挙げるとするならば、カーテンを開けたその先に巨大な霊苑が広がっていることである。多治見市は愛知県のベットタウンで、それなりの人口と、かなり開けた市街地であるので、大きな通りに面したその墓地にほとんどの方が抱くようなおぞましい印象はなく、ただただ清潔な墓石が均等にならんでいる。盆や正月になると家族連れが先祖のお参りに訪れ、ひとしきり手を合わせて帰っていく。最近作られたようなつるつるの墓石、木の棒が一本だけ立てられた無縁仏、洋式のもの。毎朝の通学に必ずそこを通ることになるので否応無しに目に入るわけで、ただ、

自分と血縁関係にある人間がそこに埋葬されているわけではなく、見る必要がないはずなのについ目に入れてしまうそれはなんなんだろうか。ものすごく近くて遠い、死ぬという「こと」を象徴する「もの」がそこにあって、僕のどうしようもない生理はそれを他人ごとであろうとさせている。折り返して、瑞浪市から多治見市へ向かう帰り道。大通りを隔てて墓地とアパートを正面に、赤信号でサイドブレーキを上げる。そういえば今日は311日で、デジタル時計は1445分でゆっくり点滅していた。

 

感情移入すればきりがないほど、僕とは他人の肉親の死があって、もしかしたらこの瞬間にも誰かが死んだかもしれない。時に、事件や話題にひとくくりにして誰かが紹介することで他人事でなくなったり、あくまで対岸の火事であったり。残酷なのか、ふつうなのか。例えるなら66号線から見た御岳山のような、僕ひとりの手には有り余るほどの巨大なそれは、常に視界の中でうごめいていて、ふとした瞬間にそのことに気がつくのだった。

 ■略歴  [Artist Biography]

1986 奈良県生まれ

2007 大阪芸術大学付属美術専門学校美術工芸学科プリントメイキング専攻卒業

2009 京都精華大学芸術学部メディア造形学科版画専攻卒業

2013 多治見市陶磁器意匠研究所デザインコース入所

 

・個展

2010 Oギャラリーeyes(大阪)

2011 Oギャラリーeyes(大阪)

2012 Oギャラリーeyes(大阪)

 

・グループ展

2005 企画イベントφ-phi(カフェバーオドリコ・大阪)

2006 グループ展 HYBRID(ギャラリー光陽堂・大阪)

2009 The extracted element 2Oギャラリーeyes・大阪)

2010 Kind of the ironyOギャラリーeyes・大阪)

2012 The 13th Anniversary Pre ExhibitionKICKS

(Oギャラリーeyes・大阪)

2012 万国モナリザ大博覧会(鞆の津ミュージアム・広島)

2013 Semantic PortraitOギャラリーeyes・大阪)

2014  Value added−フロクノミリョク(Oギャラリーeyes・大阪)

 

・参考文献

 酒井千穂:「art scape2010815日号(レビュー)

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