児玉靖枝「深韻-水の系譜」 Yasue Kodama

 

深韻―水の系譜()

91×100cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―風の棲処(薄氷)

60.6×65.2cm カンヴァスに油彩 2012

深韻―風の棲処(薄氷)

72.7×65.2cm カンヴァスに油彩 2012

深韻―水の系譜(霧雨)

130.3×162 cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

41.0×45.5cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

116.7×130.3cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

60.6×65.2cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

27.3×27.3cm カンヴァスに油彩 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

78.5×107.4cm 紙に木炭 2013

深韻―水の系譜(霧雨)

78.5×107.4cm 紙に木炭、ガッシュ、顔料 2013

 

 ■児玉靖枝 コメント [Artist Statement]

「深韻―水の系譜」

生活(住まいや職場)が変わると、当たり前ですが、実際に目に映る風景も変わります。

それにもまして、目に映る風景は、己の魂の反映であることを思い知らされるこの頃です。

日常の何気ない情景の中にふと立ち現れる非日常的光景。それが何であるかを認識する以前の感覚が、私にとって絵画的なものとして映ります。その出会いの感覚を描く行為と形式に重ね〈深韻―存在が開示する不可知な陰影や奥行〉を絵画として抽象することを試みています。

日常の散歩が具体的なモチーフとの出会いの場でしたが、散歩の時間が通勤の時間に変わってから、機会はめっきり減ってしまいました。いつの間にか季節は過ぎてしまいます。それでも、〈出会い〉は不意に訪れます。

丘の上に立つ大学の背景は、普段はあまり奥行きを感じさせない何処にでもあるような雑木林です。冬の雨の日、会議が終わって外へ出るとあたり一面が見る見るうちに深い霧に覆われて、重なる枝枝が溶けてゆき、視界が閉ざされてしまったのですが、雨や霧によって空間が満たされて、身体が世界から孤立する感覚と同時に世界に包み込まれる感覚に心地よさを覚えました。また、真冬の早朝、池の水面が明け方の一瞬吹き抜ける冷たい風によるためか、漣の形を留めて凍っていたり、またあるときは凍りかけた水面に降り積もった雪が霙状になって、周りの景色がおぼろげに映し出されていました。こうした光景は、実際の視界が閉ざされてしまうことで、逆に私に存在の気配を感じさせてくれるのです。

その不可知な奥行きの内に、存在の象徴としての〈水〉を描き出すために、いつもと同じように幾重かの層で描いていきます。下層は時間をかけて情景を描写し、上層は…。絵具だけでは少し足りない気がして (イリュージョンでありすぎるせいか) 、パール粉を少し足してみます。

可視的な水の在り様と不可視な存在の感受は、物質とイメージの間にある、私にとって絵画そのものなのかもしれません。

 ■略歴 [Artist Biography]

1961年、兵庫県生まれ。1986年、京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了。1986年、アートスペース虹にて、初個展を開催。以降、トアロード画廊(神戸)、石屋町ギャラリー(京都)、ギャラリー21+葉(東京)、東京画廊(東京)、セゾンアートプログラム・ギャラリー(東京)、Oギャラリーeyes(大阪)、MEM(東京)、松原通りギャラリーシルクロ(佐賀)等で、個展を開催。主なグループ展に、1992年、筆あとの誘惑−モネ、栖鳳から現代まで−(京都市美術館・京都)。1994年、VOCA 1994(上野の森美術館・東京以降`96 `97 `98年に出品)、光と影−うつろいの詩学−(広島市立現代美術館・広島)。1995年、視ることのアレゴリー(セゾン美術館・東京)。1996年、水際−日本の現代美術展−(ヨコハマポートサイド ギャラリー・横浜)。1999年、現代日本絵画の展望(東京ステーションギャラリー・東京)。2002年、未来予想図−私の人生劇場(兵庫県立美術館・神戸)。2007年、「DIALOGUES Painters’Views on the Museum Collection(滋賀県立近代美術館・滋賀)。2009年、LINK−しなやかな逸脱(兵庫県立美術館・神戸)。2010年、館蔵油彩名品展−資生堂ギャラリーと戦後の洋画と(資生堂アートハウス・静岡)、プライマリー・フィールドU: 絵画の現在−七つの〈場〉との対話(神奈川県立近代美術館・神奈川)。2012年、新incubation4「ゆらめきとけゆく」展(京都芸術センター・京都)。2013年、プレイバック・アーティスト・トーク(東京国立近代美術館・東京)等、他多数出品。

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