(2)フランス

1)フランスにおけるホームレスへの対応概観

 フランスをはじめとするEU諸国では、ホームレス概念は日本と異なり、より広い範疇で捉えている。この論点は本項の課題ではないので詳しくは述べないが、フランスでは、この広義のホームレスはおよそ15万人存在すると言われている。

 この数値を見ても分かるように、フランスではホームレス問題は深刻な社会問題であるが、この解決にあたってホームレスだけを対象とした法律は存在しない。しかも、わが国のように生活保護法という単独法によって規定されるのではなく、多くの法によってこの問題が取り扱かわれている。すなわち、参入最低限所得手当(RMI、1988年)、住宅扶助(ベソン法、1990年)、普遍的医療保障法(1999)の適用、職業養成と国庫補助契約による就労支援などによって、ホームレス支援が行われている。

 また、1998年には「社会的排除と闘うための法律」(以下では、「反排除法」)が制定された。この新しい法律は、ホームレス問題を「社会的排除」というキーワードのもとに捉え返し、これまで展開されてきたホームレス支援策にしっかりした位置付けを与えることを目指すとともに、新たな取り組みを推進しようというものである。

 こうした取り組み推進の背後は、「社会的排除→社会的包含・統合」論、「ベーシックインカム」論の二つの政策理念についての議論がこの20年間に相当進められてきたことがある。

 なお、フランス政府は、5月末までに新しい「排除に抗する闘いのプログラム」を発表する予定である。これは、昨年12月、ニースで開催されたEUサミットで、14カ国政府に「inclusion」のための具体的な計画の作成を義務付け、61日にヨーロッパ委員会(Commission)に提出しなければならないという取り決めがなされたことによる。ただし、スウェーデンなどは「排除」という「政策」概念がないらしく、若干各国の対応は違うようである。イギリスのブレアは反排除計画を最優先社会政策と位置付けている。

 以下では、フランスにおけるホームレス支援の諸政策の中で、とくに就労支援事業について紹介していこう。なお、それを述べるに先立って、フランスではホームレスの自立への道をどのように描いているか、その概略を示しておこう。


2)ホームレスの緊急受け入れと自立への道

 路上に出てしまったホームレスの緊急受け入れとそこを起点とした自立への道は、住むところの確保とその充実を軸に進められている。それを図示すれば、図5-2の通りである。

  路上に出てしまったホームレスは、まず各県の義務として実施されている無料電話「家なしのための緑の電話番号115番」に電話することで、緊急の対応を得ることができる。「即座、無条件、匿名」をスローガンに、暖かい就寝、食事、世話、相談、宿泊施設の情報提供などのサービスが実施されている。

 また、社会的緊急医療援助サービス(SAMU-social)が60都市で実施され、運転手、ソシアルワーカー、看護婦で構成される夜間巡回チームで、緊急援助――暖かい食事、毛布・寝袋、医療の提供、宿泊施設・病院への輸送――が実施されている。また、緑の電話は、このSAMU-socialに直通でつながっている。パリの場合、115番に電話をした者は9824,344人、9927,456人であった。

 この他、「日中の受け入れセンターaccueil de jour)」や「夜の受け入れセンター(accueil de nuit)」がある。これらの施設は、おおむね両方の機能を兼ねているものが多く、全国に約100箇所存在する。

 「日中の受け入れセンター」では、それぞれのホームレスの需要に応じて食事、衛生、郵便箱、個人的な荷物預かり、相談などのサービスを提供している。また、地域によって呼び名は異なり、たとえば、アベ・ピエール財団の管理している施設は「連帯ブチック」などと呼ばれている。

5-2.ホームレスの緊急受け入れから自立への道

 夜の受け入れセンター(accueil de nuit)」は 「日中の受け入れセンター」と同様の活動のほか、単泊または複数の宿泊も実施しており、これは、94年の住居法や98年の反排除法によって、緊急宿泊施設の整備が県の義務となっている。これらの施設の中には、薬物依存者や暴力被害を受けた女性たちの専用の施設も存在し、多様な名前(社会ホテル、夜のシェルター、緊急宿泊寮、緊急宿泊センターなど)で呼ばれている。この他、国鉄の労使によって設置された連帯委員会が、駅やホームで行き場を失った人々に対し、相談事業や緊急宿泊施設の提供などが行われている。また、冬場は、パリ市営地下鉄公団では一部の地下鉄ホームの夜間解放を実施している。

 この他、暴力被害から離婚した女性、住居から強制退去させられた家族などで、初めて路上に出ざるを得なくなった人々に対しては、集団的宿泊によるトラウマまたはスティグマを避けるため、アソシエーションの借り上げにより運営されているホテルでの宿泊(nuitées dhôtel)も可能である。

 このように、路上に出てしまった人々に対して、素早い対応を行うとともに、十分な数の宿泊施設が確保されている。

  そして、これらを起点にして、多様な自立へのプログラムが実施されているが、その基本は、社会参入宿泊施設→仮住宅・社会的レジデンス→社会住宅への移行にある。社会参入宿泊施設では、メンタルケアとともにソシアルワーカーとの相談により自立プログラムの作成する。場合によっては、職業訓練を兼ねた就労支援事業を受けることもできる。こうして、自立への第一歩を踏み出すが、それぞれの社会参入意欲の高まりや収入の増加にともなって、仮住宅・社会的レジデンスさらに社会住宅へと移行していく。これらの段階でも、家賃補助、ソシアルワーカーによる同伴活動(随時の相談活動)そして就労支援事業が実施されている。


3)社会的最低限所得保障

 こうした自立支援策の実施にあたって、まず基軸となる政策は社会的最低限所得保障(RMI)である。

 ここでは、その内容をごく簡単に紹介しておこう。

 @1988年12月1日法(社会的最低限保障法) 第1条

   「年齢、心身状況、経済及び雇用状況に関連して、就労が不可能なすべての人々は、生存についての適切な諸措置を社会から享受する権利を有する。生活上の困難な状況にある人々に対する社会的、職業的な参入は国民的要請である。この目的において、参入最低限所得(RMI)を、本法で決められた条件の下に支給する。このRMIは、あらゆる形態の排除、とりわけ教育、雇用、職業基礎教育、健康、住宅の分野における排除を解消することに向けられる。貧困に対する闘いにおけるグローバルな施策の基本的措置の一つである。」

 A適用対象と援助

  ○制度創設の理由

失業保険受給期間の過ぎた者、補償のない者が全失業者の3割にのぼる(77万人)という事態への対応

対象:

  雇用保険給付が終了した者

  ○援助:

a.収入が定められた最低限所得に達しない25歳以上の個人への、最低限所得手当の支給と住宅保障、医療保障

b.職業参入支援。受給者の家庭環境、教育水準・職業資格などの能力、そして県が提供できる就労手段を考慮して、職業参入を支援 

  ○参入手段及び施策:

    a.受給者の意欲を動機づけて再奮起させる活動

    b.公共的利益を生む雇用・就労 

c.ソシアルワーカーの社会的同伴活動による受給者の市民生活における自立の確保、地域におけるアソシエーションの社会的団体活動への参加、余暇・文化・スポーツ等の諸活動への参加

    d.住宅(再)入居や住宅改善への援助 

e.職業基礎教育や就労に関する訓練受け入れ企業や職業訓練機関・アソシエーションとの協定(補助金支給など)

f.医療保障の施策


4)就労支援事業

 この社会的最低限所得保障受給者はホームレスとその予備軍的な失業者たちであるが、その数は約200万人、このうち、約半数は労働能力のある者と言われている。彼らに対して、フランスでは多様な経済的参入支援策(=就労支援事業)が実施され、社会的最低限所得保障による現金給付とともに、国庫による補助雇用が行われている。

 この経済的参入支援策としては、次のようなものがある。

@公的就労=自治体などの直接雇用

A企業における職業資格取得のための実習

B連帯雇用契約=企業、非営利アソシエーションによる雇用

C「経済を通じての参入支援活動」

 公的就労は、自治体が正規雇用職員の仕事の領域以外の分野で市民サービスの向上につながる仕事を新しく創り出し、その領域でホームレスに限らず多くの失業者を直接雇用するものである。第二の企業における実習は、彼らを対象とし、職業資格取得を目的して実施されている。第三の連帯雇用契約は、新たな就労先を見いだすのが困難に者に対して国家、企業やアソシエーションそして本人の間で連帯雇用契約を交わし、これにもとづいて一定期間雇用するというものである。そして、とくに興味深いものとして、第四の「経済を通じての参入支援活動」がある。

この活動を担う組織として、参入支援企業(Entreprise dInsertion(EI))と労働者派遣仲介機関Associasion Intermédiare(AI)Entreprise de travail temporaire dinsertion(ETTI))の二つがある。

参入支援企業が増え始めたのは1980年代からであり、70年代末、いくつかのホームレス宿泊施設のソシアルワーカーたちが施設居住者に対する自立の道を拓く闘いとして、施設内に付属の作業場を作り始めたことがきっかけであった。もちろん、こうした動きを受けて、政府も80年代にはこれに対する支援も実施しはじめた。こうして、宿泊施設内作業所や就労生活適応センターにおける作業場が増加した。

また、政府の財政的支援が軌道に乗ったことを受けて、民間のアソシエーションも独立した参入支援企業を創設していった。この民間のアソシエーションが設立したものには、非営利団体(NPO)の形態をとっているものから有限会社・株式会社までいくつかの組織形態がある。その事業分野も、建設、自動車修理、農業、山林管理、レストラン、運輸、情報など様々な産業分野にわたっている。このようにして、フランス全体では1996年には、前者の作業所が250カ所、後者の参入支援企業が770を数える。

他方、労働者派遣仲介機関も80年代中頃以降設立が相次ぎ、これらの機関への国・県などのよる助成も実施される中で、96年には1,110に達する機関があると言われる。また、これらすべての機関で働く就労者数は96年には4万8000人であった。

 昨年12月、パリにある二つの機関を訪問して直接、その事業活動を知ることができた。一つは、レストラン経営を通じて参入支援を行っている企業Le coq HERON(ル コック エラン)、もう一つは労働者派遣仲介事業を行っているDyna.MO(ディナモ)である。

 以下では、このうち、Dyna.MOについて詳しく紹介していこう。


5)労働者派遣仲介企業 Dyna.MOについて

  労働者派遣仲介企業には、Associasion Intermédiare(AI)とEntreprise de travail temporaire dinsertion(ETTI)の2種類があり、Dyna.MOの場合は、両者の組織を運営している。

 前者のAIは、就労困難層を対象に初歩的な職業訓練を派遣事業を通じて実施する機関、後者のETTIは、それを終了した人たちがより高度な技能を習得するために、また本格的な社会参入を果たすための訓練を受けるための派遣事業を実施している。以下では、インタビューによって得られた知見を、箇条書き風に紹介しておこう。

DYNA.MOの活動 ETTIとしての活動 (有限会社組織)>

ETTIの設立:95年

 完全に民間の派遣会社が、パート労働者を派遣して時間労働をさせるのと同じようなことをおこなう。ただし、対象となる人達が非常に人間的に困難な問題を抱えている、すなわち健康上の問題、健康上についてはアルコール問題、あるいは精神的な問題、あるいは住居の問題、あるいは資格、職業訓練で読み書きの問題からはじめなければいけないといった問題を抱えている人達を、相手にするところが、民間派遣会社と違う。DYNA.MOは、就労契約というものを交わす。

2000年度の派遣対象者141名:かれらの派遣期間は様々 最低1週間、最長は1年以上

・スタッフの仕事10名:受け入れ企業を探す仕事している人が全スタッフの50%

・困難な状況にある人たちに全日同伴活動を行う人が、残りの50%

・国からの支援:派遣労働者受け入れ企業に対して補助金がでる。

@助成金 年間12万フラン:

社会的労働の年間あたり2万1千時間の就労時間をカバーする金額として助成される社会的労働といった場合は、その量ではかれないが、国は一応この時間数を規定して、それに対する助成金を出している。

A雇用者負担が免除される

最低賃金の100%に相当するものが免除される

最低賃金額以上の給料をとる人がいた場合には、その差額分はこちらが負担しなくてはいけない。

・成果:

 雇用による社会参入が可能になった人。CDD(期限付き労働契約)、普通の形態での派遣社員として、そういった労働契約をもってここを出ていった人が、今年は35% 

DYNA.MOの活動 AIとしての活動 (非営利団体)>  

1987年に設立された非営利団体

ETTIとしてのDYNA.MOは、有限会社の資格をもっているが、AIのほうは1901年の法にのっとる非営利団体として承認されている。

・国からの免除

AIでも雇用者負担は免除される。

ASI(Appui social individu)個人的な社会支援というひとつの職務があるが、この職務について働く人の給料というのはDAASのほうから出る。

DAASは、6ヶ月に付き12万フランの支援、国より倍の支援をしている。

・派遣先企業

ここに来る人を使ってくれる顧客としての企業:AIの場合はパリ市内のみに限定。但し、ETTIはパリ市郊外も含むパリ地方に派遣できる。

ETTIとしてのDYNA.MOとAIとしてのDYNA.MOの違い>

・利用者となるべき企業

ETTIの場合:完全に企業が利用者である

AIの場合 :絶対に企業ではない。非営利組織としてのアソシエーション、半官半民の団体、あるいは個人。決して、企業に向かっては出て行かない。

TDA(付加価値税)

ETTIの場合:19.6%の付加価値税を払う義務がある。

AIの場合:非営利団体ゆえに免除される。

・提供するサービス

ETTIとAIに共通して、いちばん多いのは、いわゆる団体の給食サービス、特に、大学の学生食堂にもよく派遣されている。

AIの場合:家事手伝い。アイロンがけから、一般家庭で必要とすることすべて。

その他、引越の人夫として働く場合もある。

半官半民の場合はいちばん多いのはレストランに向かって出て行くということ。

第3次産業では、書類の整理、あるいは封筒入れ作業などが、大体の職種。

AIにおける職業訓練(Formation)

@ ここに来る人達は、働くためのフォルマシオン(職業訓練)を受けている人ではない。いろんな難しい問題を抱えている。

A     土曜日に3回、フォルマシオンを実施。例えば、個人の家庭に行った時に、衣服はどういうふうにたためばいいかを教える。それから洗剤の使い方、どういった種類のところにどの種類の洗剤を使えばいいのかということ。

B     の研修は、DYNA.MOの自己資金で実施、。

C     以上のフォルマシオンは、2000年にやったこと。1999年では、職に就くときに必要とすること、例えば時間を守ること、職場のヒエラルキーを尊重するといったことなど。

・雇用期間 EIの場合 期間ごとに雇用契約を交わす (3ヶ月契約、6ヶ月、9ヶ月、12 ヶ月、あるいは2年)、同伴活動を伴う

AIの場合 AIから外部企業に働きに行く。同伴活動はない。

・社会参入への過程

DYNA.MOに、雇用による社会参入を求めてくる人に対しては、まずAIの枠組みで働かせることから始める。理由は、AIに登録している利用者のほうが、ETTIに登録している企業よりも要求事項が少ないからであり、条件の厳しくない労働を提供しているAIの労働のほうから始めていくのがなじみやすいからである。

AIにおける評価システム

AIから出て行く人達は、受け入れ相手による評価を受ける。fiche devaliation(評価票)が作成される(毎月あるいは3ヶ月おき)。時間を守って出勤してくるか、自立して仕事をしているか、責任をもって仕事をしておるか、などを、5段階の評価(tres bienから始まって、破局的なastorophiqueなまでの5段階評価)をされる。

ETTIも同様の評価票がある。

・評価にもとづくオリエンテーション

相手先から上がってくる評価にしたがって、オリエンテーションをどう行うか、何が欠けておるかについて、私たちの判断の基準とする。

AIからETTIへ

AIの枠組みでの仕事がうまくできるようになった人は、ETTIという企業のみが相手先となる枠組みへ移行。厳しい要件を突きつけてくるそちらのほうでも、仕事ができるようにする。

・達成率

AI終了時における達成率は、20〜25%、それに対してETTIの場合は35%、時によっては40%。AIによる訓練だけでは十分ではないということである。

このため、DYNA.MOとしてはAIと、非常に厳しい要求をされるETTIの二つをつくることによって、職業による社会参入を系統立てて、あるいは人々がより多くの適応力を持って活動できるようにしている。

 

 <AIへの参入の経路>

 いろいろな経路がある。自発的にやってくる人、口コミでくる人、市、区、あるいは社会住宅などのソーシャルワーカーの紹介により、やってくる。

AI参入時における健康状態のチェック

 AIに入ってくる人のために、パートで医者がくる。医者がこちらに登録した人を必ず診察し、どこの医療センターに行けば、無料であるいは安い施療を受けることができるかをアドバイスする。

これは、私たちと労働者の受入機関とのパートナーシップを保つために、必要なことである。

AI登録者の特徴

 26歳〜49歳が60%で、もっとも多い。25歳以下20%、50歳以上25%。

女性は、たとえば、派遣先として多い給食業の場合は、サービス係、給仕係。男性は、皿洗いを含めて裏方の仕事が多い。

 国籍はフランス国籍、外国籍が半々。北アフリカ出身者が外国国籍としてはいちばん多い。

Carte didentiteの所持について

  こちらが社会参入の手助けをするとはいえ、規定に沿わない人はだめである。たとえば、提出される身分証明書に不正行為のあとが見られるような場合は、雇用主として、その人を雇うわけにはいかない。絶対にそれは拒否する。

 

 <SDF(家なしホームレス)の受け入れ>

SDFを受け入れている。こちらで担当したことがあるケースは、前に住んでいた社会住居から追い出されて、その間3日間、橋の下で野宿をしたという女性ある。その野宿の間に完全にちょっと様子がおかしくなってしまい、彼女の受け入れ先にむかって「少し時間の猶予をやってくれ」ということで、SDFでありながら受け入れられたケースがある。

 

 <AI登録者と住居保障>

例えば民間アパートに10人で住み、きわめて狭いといった場合には、その人達にふさわしいアパートを見つけるために、アシスタントソシアルの助けを得るということもある。

それからfoyer dhebergementから来る人もいる。SDFもいる。

なんといっても、住居をしっかりすることと、雇用先を見つけることは両方、対になっていることですから、絶対に第1に住居を見つけることがなければならない。

ここに来る人は、まず第一に働き口を求めて来ます(たとえ住むところはなくても)。しかし、そこでDYNA.MOの果たす役割は、「働くには、住居なくしてはだめなんだよ」ということを教育しなくてはならない。そのことが、来る人のなかには、わかってない場合もある。

 ここに来る人のすべてが、住居の問題を解決できるわけではない。でも、SDFの人にも、短期間の何かの仕事、1日4,5時間、わずかでもお金が入る仕事を経験させてあげることは、その後のことを考えると必要ではないかと思っている。しかし、雇用と住居を同時に見つけるということは、なかなか困難である。

 

 <DYNA.MOの活動にとって最も重要なこと>

それはパートナーシップということ。登録者の健康問題、研修・訓練など全て、アシスタントソシアルの人達と、私たちDYNA.MOと、それから本人が、一体となって仕事をしないとうまくいかない。特に、私たちにとって、そういったパートナーとなってくれる人を多く抱えていることが、強みになるし、それなくしてはできない。

 

 <申込者と実際の登録者>

AI、ETTIいずれも、申し込み者の3分の1しか受け入れることができない。ソーシャルワーカーから、「この人は働けるから」といって紹介されても、DYNA.MOから見ると、その人が就労できる条件を持っていないということを発見することもある。したがって、就労の前にフォルマシオンを受けるべきかどうかを、こちらのほうは、判断する場合もあります。

 申し込みに際して、10人〜20名ぐらいの申込み者を集めて、ETTI、AIが何かという全体的な情報を与える。また、個人面接もある。ただし個人面接は任意的なことで、別にこれを受けなくてもよい。

登録することになると、全ての必要事項に記入してもらう。その登録すべてが終わった場合には、毎日朝は少なくとも8時から10時のあいだ、夕方は4時から6時のあいだ、仕事を探しに自分でここにできるだけ頻繁に来るように、指導している。そうすると、ここに来ているあいだに別室でもって、いろんな仕事についての情報雑誌を見たりすることもできる。とにかく自分で歩いてここまで来るという努力をすることを勧めている。

ETTI:一年間で130名が仕事をした。AI:この枠では、その倍の人数が働いた。

 <仕事が見つかるまでの生活費保障>

40%が収入ゼロ、なにも得ていない。アセジックの権利をもっている人が30%、RMIstが20%。中には、ゼロフランではなくて、1日2時間程度の仕事をするという契約を持って来ている人もある。

40%の収入ゼロの人々について

25歳以下だとゼロ。外国人でRMIをもらうには3年以上の居住が必要であるが、外国人のなかには3年以上ここに居住している証明がないから、生活費保障がゼロという人もいる。

それ以外のカテゴリーとして、社会的な援助には関係したくない、扶助には関係したくないと思っている人もいる。

 すなわち、40%のなかには、@25歳以下の若者、A外国人で滞在年数が少ない、あるいはそのアセディックがもらえない、B一切そういった社会的扶助には耳を貸さない(50歳以上の人も)、これらのタイプがある。

 

 <DYNA.MOの発足(87年)の経緯>

  @設立の背景

フランスの86〜87年という時期:ちょうど失業者が増加していた時代、そして失業者の置かれている状況もだんだんと悪化していくという時代であった。そのなかで、企業関係者をはじめいろんな人達が、失業者を救援することが必要だと思ったことが、まず背景にある。その彼らが、ある理事会を設立し、「共通の問題としてなにかしなくてはいけない」と思ったのが87年で、AIを設立した。

その理事会は現在もあり、当時その理事となった方のなかには、現在もメンバーとして残られている方もある。3名がSDF担当。

 したがって、社会活動だけに関わっている人ではなく、民間企業からも、こういう活動に参画したということで、彼女自身も民間銀行の紛争解決係にいた。

95年には、AIだけでは無理だということで、ETTIを設立した。そのひとつの理由は、TDA(付加価値税)を非営利団体は払う必要がないということがあり、これはその他の民間企業との間で不正な競争になると考えたことにある。つまり、このようなことでは、93年からオブリー法によって、ETTIを作ることが推奨されていたが、その先駆的モデルたるものとして、DYNA.MOの理事会が95年にETTIを組織として作るべきと考えた。ただし、DYNA.MOのAIがETTIの95%の資本を所有している。