特掃就労現場や三徳テント・三角公園シェルターで、体調の悪い人・高齢者等について、市更相につなげたり、アパートを確保して生活保護をとるお手伝いをしてきました。

 2000年5月末に釜ヶ崎地区内に福祉アパート第1号がオープン、6月から本格的に相談活動を開始しました。

今回報告するのは、2000年6月から2001年3月末までの数字です。とはいえ、本格的に相談を受け始めて以降、路上で相談を受けたりするケースがかなり増え、記録が残っていないものが相当数あります。

(相談受付の発端)

 事務所に相談しにくる人も多くなりました。相談を待つだけでなく、情報提供の機会を作るべく、こちらからの積極的な働きかけとして@特掃就労の際の「高齢者アンケート」A大テント・シェルターでの声掛けなどがあります。

変わったところでは、市更相・福祉事務所から「生保希望の方が相談に来ているが、そちらで居宅確保してくれませんか」といったケースも。また西成警察署の防犯コーナーから「この人を福祉につなげてやって下さい」と紹介を受けたケースも1件あり。

○特掃「高齢者アンケート」について

2000年度輪番登録者2815名のうち、01年3月末までに65歳以上に達した人が880名、そのうち1回でもアンケート回収が出来た人が486名で、回収率は55%。そのうち、すでに居宅保護や施設保護にかかっていた人が141名(16%)、アンケートがきっかけでNPOからアパート入居して居宅保護に移行した者89名(10%)、居宅保護希望という回答をもらっていながら、3月までに実現できない者33名(4%)ということに。

入院・入寮)

「施設・病院等に入れてしまえば一件落着」とはせず、病院・寮に訪問して、再び野宿に戻ることのないように、ということを目標にしました。それは半分は達成できたといえるし、半分は未達成だったと思います。特に入院された方については、可能な限り訪問活動をしてきたつもりですが、重症患者など、特定の人に訪問が偏り、まったく訪問が出来ないままの人も。

入院・入寮に至ったケースについて、実数を把握できないというのは、本当にだらしない。今後はきっちり記録をとり、その後のフォローの体制を整える必要があります。ボランティア募集の呼びかけを強化したり、釜ヶ崎・野宿者をめぐる問題の学習会など企画し、関わる人を増やす取り組みも必要。

とはいえ、何もしなかったわけではありません。前号でもお伝えしたように、末期ガンの高齢者が医療扶助にかかれるよう、残された時間を安心して過ごせるように、できるだけのことをしてあげられたケースも。つくづく残念なのは最期を看取ることができなかったこと。

(アパート入居・居宅保護)

入居時の初期費用の負担が軽く、しかも最初の家賃支払いを最初の保護費受給時まで待ってくれるアパートの出現で、野宿からの脱出の道が容易になりました。そのため、下記の表のように、2000年6月から2001年3月までにNPOの紹介でアパート入居し、「福祉自立」を果たした人の総数は169人となります。このほとんどが男性ですが、この中には4名の女性も含まれます。また、この全てが、生保受給というわけではなく、年金で自活している方も3名含まれています。(表1)は月別の内訳人数、(表2)は入居先のアパートの内訳です。

(表1)

 

 

(表2)

 

人数

 

アパート名

人数

6月

11

 

アプリシェイト

36

7月

10

 

陽だまり

48

8月

19

 

おはな

30

9月

34

 

明光ハウス

28

10月

22

 

白川

17

11月

31

 

兆山

4

12月

6

 

フレンド

5

1月

8

 

その他

1

2月

10

 

169

3月

18

 

 

 

169

 

 

 

気候の厳しくなる12月・1月になぜか、人数が少なくなってしまったのは、どういう訳か?

 これは9〜10月にかなり多くの「福祉自立」が果たした人の、その後のアルコール依存や債務の問題等の対応に時間と人手を投入してしまった結果。

スタッフ・ボランティアの拡充の必要性が痛感されます。(表3)はアパート入居者の2001年3月31日現在の年齢とその割合。

(表3)

 

 

年齢

人数

65以下

17

10%

65

39

23%

66

25

15%

67

22

13%

68

16

9%

69

7

4%

70

11

7%

71

12

7%

72

4

2%

73

8

5%

74

2

1%

75

2

1%

76

2

1%

77

2

1%

169

100%

169人のその後ですが、そのうち1名が00年12月に交通事故で死亡。3名が失踪して保護廃止、、3名がそれぞれ結核・心臓動脈瘤破裂・クモ膜下出血等で長期入院中、1名が重症のアルコール依存で自立生活が不可能と判断され、アパートの部屋を引き払い入院保護に変更されました。上記の3件ほど長期の入院に至らないが、生保受給後、健康を害し入院にいたるケースは後を絶ちません。

○退院後の居宅保護に結びつける相談―3件

1件は無事福祉アパート入居して生保受給。うち2件はまだ未だ入院中、5月末までには居宅保護に移行できる見込み。

(入居後のサポートについて)

○貯金があり年金もあるので、自活できる資力があるのだが、軽度の老年性痴呆があり、一人暮らしが困難な高齢者のサポート。金銭管理・日常生活のお世話をさせてもらいつつ、老人ホームの空きを待つが、途方もなく時間がかかる。現在は、事務所近くのアパートに入居し介護保険のデイケア・サービス、また喜望の家のデイサービスなどを利用している。また、財産管理センターに預金を預かってもらう手続きを進めている。

○交通事故にあってその後遺症で就労が不可能な方のケース、。賠償金がまだ残っているのですが、アルコール依存のため、日常生活の維持が難しい。その方の金銭管理をさせてもらいながら、今後の自立生活に向けて、生活のリズムをつかんでもらうべく、一緒にご飯を食べたり通院の送迎などの支援をしている。

○債務の問題 

・金融業者に「生保受給中なので支払えない」旨の内容証明を郵送することを勧めたり、代筆したケース11人。

・弁護士さんにお願いして自己破産・免責申立した人1件、同じく弁護士さんに力を借りて悪徳業者から過払い分を取り返したケース1件。

・年金担保の借金があり、医療扶助にかかれない状況を、代理で金融業者と交渉し、債務整理をしたケース 1件

○居宅保護にかかっていたが、何らかのトラブルでアパートを出たものを福祉事務所と連絡をとり、保護継続の確認ないしは新規に保護申請に結びつけたケース 4件

○住所設定に関わる相談

住民票移動手続きの代行・職権削除されている方の住所設定(戸籍謄本・附票を取り寄せて、当該役所で住所設定する)の代行などをしてきた。これは生保受給した人が今後介護保険などの公的なサービスを受けるために必要だし、また多くの労働者にとっては白手帳取得などの必要性から、数え切れないほど多くの相談を受けた。最近では住所設定先をNPOの事務所にする例も増えている。

長年家族との音信をたっている場合、家族から家庭裁判所に失踪宣告を求める申し立てが出され、除籍(死亡扱い)となっているケースも多い。その場合、家裁に失踪宣告の取り消しの申立をすることになる。除籍簿を取り寄せ、本人の写真を用意して裁判所にいって手続きをする。NPOではこうした相談を6件受けた。うち4件は無事、戸籍回復、1件は申立手続き完了して、裁判所からの連絡待ち。もう1件は除籍簿を取り寄せて、申立準備中。

無国籍で外国人登録をしたケースが1件ある。

○入院中にテントが撤去、家財道具を本人の代わりに持って来てほしいという相談 1件

 この相談の発端は入院している病院のケースワーカーさんの方から連絡がきました。本人さんに直接会いに行き、テントの場所を確認し、無事本人さんの手元へ届けることが出来ました。

○家族のもとへ無事帰ったケース 4件

家族との軋轢から、家を飛び出し、野宿を強いられてきた高齢者、放浪癖のある30代の男性など。

(今年度の目標)

 前年度不行き届きの点は、改善するのはもちろんのこと、新しい取り組みも。特に次の2点。

1.      福祉相談事業部門の予算の独立

寄付を募る活動・ボランティア・スタッフ募集のための情報発信の強化。具体的にはパンフ作成して企業回りの活動・福祉相談事業の会報・ホームページの充実・学習会の開催など

2.      独自のデイケア・グループホームが持てるように準備、研究。またそれに繋がるような活動

○福祉自立者のリクリエーション企画の実施

生保受給者が「生きがい喪失」の状態に陥ったり、持て余す時間をアルコールで埋め合わせることのないような取り組みをしていきたい。グランドゴルフ(ゲートボール似たゲームだが、こっちのほうがルールは簡単。(大阪府福祉基金地域福祉振興助成金申請中。この助成金が降り次第道具を揃えて実施する予定。仮に助成金が降りなくても6月から始めたい。)

○また、就労意欲の高い人・技術をもっている人のために、仕事を探したり作ったりする活動。収入に結びつかなくても、生保受給者が自分の特技を活かせる仕事がないか。なければ例えば地域内清掃などで回収した廃品を修理したりする仕事など。

○福祉自立者対象のアンケート。

これも6月実施予定。上記のデイケア・グループホームをどんなものしたらよいか、実際に生保受給している人の声を聞く。

また、陽だまり・アプリシェイトなどでは入居者の健康診断・往診をアパート内で受けられるようになった。そうした体制を組めないアパート入居者については特に健康が気がかり。健康状態に関する質問を盛り込む予定。(終わり)