日本の公共事業


◇ 納得できない吉野川河口堰の建設98/11/18

川の中に石を積み上げて堰(せき)を乗り越えて清流が流れ、岸にはヨシが生 い茂る徳島県の吉野川河口近くに240年も前に建設された「第十堰」。 、この堰を巡って建設省と市民団体の論戦が続いています。現在の堰を撤 去し1000億円を掛けて新たに巨大な河口堰を建設するという建設省に市民団体 が待ったをかけています。ココ参照
「無駄な公共事業」と批判された長良川河口堰や国営諫早湾干拓工事と同じこ とが吉野川でも繰り返えされようとしているのです  この計画は150年に一度の洪水を想定。現在の堰は老朽化が激しいうえ、水 流を妨げるので大雨が降ると上流で危険水位を超えるところがでるとし、それ を防ぐには可動式の堰が必要と説明されています
 建設省への疑問が集中したのは、建設の根拠となるデータでは150年に一度 の洪水が起きた場合の流量を毎秒三千トンと計算しています。これについて 市民団体の指摘で建設省は千七百トンに修正しました。 河口堰を造るのなら堰より上流の堤防全部を嵩上げが必要になるのは当然です。 諌早と同じく河口堰は川の流れを止め、海から逆流する塩水を遮断するから、 塩水と淡水が交わる「汽水域」に生息する生き物が死滅する恐れがあります。 地元マスコミのアンケート調査では「建設反対」が「賛成」を大きく上回り、 6割強が住民投票を望んでいます。

  さて「政治と市民の現在」米原譲、土居充夫共著  法律文化社
p149 政官業の利益共同体が確立され、強化される事になつたのは、高度成長期の典型 的な人物である故田中角栄元首相の影響が大きい。 田中型政治の特徴は、民主主義=数の力=金の力 という考えかたにある。 田中は多数派工作の為に、他派閥や野党の政治家にも、官僚にも、新聞記者や評 論家にもカネを渡していた。1972年の総裁選挙でも、1974年の参院選でも莫大な カネが動いたといわれる。忘れてならない事は田中は協力度に応じて自治体や土 建業に公共事業を割り振ることによって票とカネを確保していた事である。 最高権力者になってからは勿論それ以前の重職にあって同様の事が出来たのであ る。 それを指摘されても反省せず力によって押さえこもうとした。それがおよそ10 年ほど成功したために政治家から一般市民まで、道徳観がマヒしてしまった。 田中にはそこまでして獲得維持にこだわった権力によって実現を望む政治理念 があるわけではなかった。「日本列島改造論」でさえ議論に加わったことは一度 もなく、言わば思いつきで採用したのである。 三木や福田の抵抗の後は総主流体制となつた。野党も同じ穴のムジナか追及に迫 力がない。いたるところでミニ角栄が誕生しそれか゛不思議に思われらなくなつ たのである。司法やマスコミも力がなかった。ロッキード以降の数々の疑惑にも 関わらず大物は捕まらなかつた。ポスト金丸の後継者争いがコジれて自民党を牛 耳ってきた経世会が分裂してようやく、金丸が逮捕され、ゼネコン汚職の実態が 暴露されはじめたのである。

p151 政官業の癒着
1994年9月に水源開発問題全国連絡会の第一開総会が開かれ、全国各地でダム建設 反対運動を展開している市民たちから報告がなされた。 そこに共通して見られるのは、ダム建設の論拠が薄弱であり、つまるところ建設 それ自体が目的であるとの批判であった。(月間むすぶ1995年1月号) あとで見るように、官僚の理由づけは合理性に欠けるが、非民主的な手段も辞さず 強行しようとする。そうまでして建設にこだわる理由はなぜだろうか。
象徴的なのは完成しても堰のゲートは閉めない(堰は作っても使わない)との政治家 間の約束があったという長良川河口堰である。 結局、使用よりも建設それ自体によって利益を得る人達がいるからであると考えざ るを得ない。 朝日新聞によると河口堰の着工15年前の1973年に談合で、鹿島建設と大成建設のJV に受注が決定していた。当時の幹部によると「ダムや堰の工事は大規模で地理的 条件も悪く、入札に必要な調査、積算に2000万円以上の経費がかかる、落札できな ければこの経費は無駄になるため実際に落札する業者以外は調査積算しなくて済む ように土工協が各社の希望を取り受注調整をした」という。 1972年この年、首相の田中は自らダム談合表を作り天野建設相に見せている。 天野は各業者に平均に仕事が行き渡るように長期にわたり受注者を決定したという 裏で田中は上納金制度によってカネをせしめていたのである。(ダム、道路、鉄道工 事の場合請負高の3% ) 業者は3%分損しているように見えるが受注額を必要以上に高くしておけば問題ない。 だから日本の公共事業は高くなるのである。

p152
官僚主義
さて建設省はいったんはじめた仕事は状況が変化しようと続ける姿勢を崩さない。長 良川河口堰でもさまざまな操作やテクニックを用いた。1、峻せつをしなくても洪水の 心配はないとする着工前の1984年に出されたあるコンサルタント会社の計算結果は 取り上げず、またその旨も公表もしなかった。そして着工後の1990年に堰の必要性を 裏付けるべく別の計算結果を公表した。2、1963年から68年にかけて実施した環境調 査の一部を改ざんして要約版として公表した。元々の報告書では、河口域でのヤマトシ ジミについて「大きな影響がある」とあったのに、要約版では「軽微な影響に止まる」 と変っていた。3、建設省中部地方建設局が塩害を強調するためにニセの塩害田をPR誌 に掲載し、批判されると「撮影した町当局のミス」と責任を転嫁した。4、北川環境庁 長官に追加調査を命じられた建設省は「職員の半数を建設会社やコンサルタント会社の 出向社員が占め建設OBが理事長わ務める「ダム水源地環境整備センター」に実施させた 上「学術経験者15名の協力で」行ったと発表した。ダム建設では全国的に建設目的がこ ろころ変ったことがおおい。



以上「政治と市民の現在」より抜粋しましたが、仮に年間20兆円の公共事業、 海外支援等が行われるとして1%が政治家の懐に入っているとすればどうなるでしようか。2千億という途方もないバックマージンがヤミで動いていることになります。諌早に続いて吉野川第十可動堰も官僚や議員、県議などが力をいれるのも当然ではあります。選挙の時に数億を投資し、平身低頭し、声を枯らしているのもこうした裏を知っておられるからでしょう。公共事業の最終決定権は住民が握るドイツを真似る必要があると思います。同時に事業の事前調査については入札参加企業全社で共同負担とすべきではないでしょうか。

神戸空港問題
静岡空港問題

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