本間さんの粘土団子製法ほか

本間裕子さん


砂漠緑化運動


砂漠化防ぐ自然農法に夢託す


 江戸川区西葛西に住む本間裕子さんは、砂漠緑化運動に取り組んでいる一人。世界的な活 動で知られる自然農法提唱者・福岡正信氏の指導のもと、膨大な量の樹木や穀物の種子を粘 土団子にして世界の砂漠化した土地にばらまく壮大なプランを福岡氏とともに推進。「地球 上を緑にしたい」との壮大な夢を持つ本間さん。中国北京の視察から帰国したばかりの本間 さんに話を聞く。


 直径15mm程度の粘土団子はまん丸で、ちょっと見はココア玉のようだ。コロコロとして 乾いている。砂漠のような環境が苛酷な所でまくには、「乾いていないとダメなんですよ」 と本間さんは説明してくれた。  この丸い小さな粘土団子の中には手づくりの場合2、3個の種子が入る。種子を粘土で包む のは芽が出るまで虫に食われるのを防ぐと同時に発芽に必要な条件を備えているからとい う。


 これまで世界の各地でまいてきた運動は確実に実を結んでいる。1万haの大地だと大体10 数tの種子が必要で、これを現地で粘土の団子にし、現地の協力者とまく作業を続けた。そ の成果は砂漠をみずみずしい緑に変え、大根や果実を作り、生き物に食料を供給している。  「もう感動的ですね」いきいきと語る本間さん。本間さんは4年前、友人に聞いて知った 福岡氏の講演を聞いて共鳴し、愛媛県在住の同氏に手紙を書き、手伝いを申し出た。  その後、86歳の高齢の師を助け、自然農法の勉強を重ね、粘土団子の技術を身につけた。 この間、各国から要請を受けて世界を巡って氏の活動に同行した。今では本間さんは、緑化 についての指導や講演に全国の学校などを飛び回っている。  一方、中国の視察を終えたばかりだが、その様子をこう語ってくれた。北京から北西 120kmのところにある“官庁水庫”というダムは干ばつにあい、この3年で水位が干上がろ うとしているところ。ダムの周辺では農民が畑を耕しているが、山手線の内回り程度のほぼ 1万ha四方に粘土団子をまく計画という。  このためには種子が12t程度必要で、本間さんはさっそく各方面に“種集め”を呼びかけ ている。「スイカやオレンジ、メロン、ビワなど何でも構わないので、食べた後は捨てない でぜひ洗って乾燥して送ってくれませんか」と訴える本間さん。  一口に現地で粘土団子を作るといっても大変な作業だ。まず現地の協力者やボランティア が必要。特に現地では種子がなかなか集まりにくいという。  粘土は現地のものを使い、コンクリートミキサーによる粘土団子作りから始める。  これまで政府などの要請などで出向いた国はミャンマーとタイの国境の村・カンチャンナ ブリや、ベトナム、フィリピン、ギリシャ、トルコ、インドなど9ヵ国。  ベトナム・ソンベでは米兵がまいた枯れ葉剤の毒を緩和するためタピオカをはじめ様々な 種子で緑化を図った。  また、ギリシャでは学校を回り子供らと粘土団子をまいた。環境大臣、農業大臣とも会談 した。アテネから500km離れたところに、あと10年も経つと干上がるだろうといわれるベゴ リチ湖があり、その周辺に州知事の協力でヘリコプターから粘土団子がばらまかれた。  精力的に活動を続ける福岡氏とともに運動する本間さんは、「福岡さんという人物にまず 魅かれたのは、信念を持って自然農法を実践してきたことです。たった一人で活動を60年も 続けてこれたのはすごいことだと思う」。  福岡氏の提唱する農法とは、耕さず、肥料・農薬も一切使わない、雑草もとらなくてよい というものだ。粘土団子でまいた種が芽を出し、大地が緑に覆われ露がおりる。やがて雨が 降り樹木が伸び、作物がとれるようになる。特に南方では樹木の成長が早いため、数年で 木々が生い茂る。これを幾度も繰り返し実践してきたのが同氏。  本間さんは「世界を回ってみて砂漠化に悩んでいる国がとても多いことを知った。また、 水の大切さ、緑を増やすことの重要さを切実に思った。人間は自然に養われて生きているん ですね。地球上に生きているもの全てが心から喜べるような環境になったらいいですね」と 目をキラキラさせて語った。  


■現在、種集めは一次中止しています■


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