本番日誌 Part4


◆12月19日(木)

今日は、最後の本番だ。ソワレのみなので、劇場への入り時間は3時とゆったり している。天真爛漫メンバーは1時にいったん稽古場に集まり、一足おさきに 夜中に始まる打ち上げの用意をしていた。まだ明るいうちに稽古場で野菜を 切ったりしていると、なんだかほのぼのとしてきて、もう1回本番があること を危うく忘れそうになってしまった。



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天真爛漫の打ち上げについて

天真爛漫の打ち上げは、毎回決まって稽古場で焼肉と鍋物をすることにしている。昔、少々黒字がでて大喜びしていた公演のとき、最後の打ち上げをお店で豪華にやりすぎて、結局赤字になってしまったという経験をして以来、打ち上げはいつも稽古場でやるようになったのだ。これなら飛び込みで参加者が増えたって平気だもんね。




午後3時劇場入り。 あたらしさんが
「声がやっぱり聞こえにくいんですよね。私の発声練習方法を一度やってみませんか?」

と言い出したので、役者は全員

”あたらしさん式発声方法”
をやってみることにした。

あたらし

「全身の力を抜いて、腰から上半身を下に降り降ろし

ながら、『バウッ!』って声を出すんです。
こんな感じで
『バウッ!』って。」

役者たち

「バウッ!バウッ!バウッ!・・・

(なんだかちょっと恥ずかしい)」

あたらし

「もっと真剣にこうやって『バウッ!』って。」

役者たち

バウッ!バウッ!バウッ!

(腰が痛くなってきた・・・)」



腰痛を避けるため、結局、発声は各自慣れた方法に戻すことになった。

言い忘れていたけれど、今回のお芝居で最後のシーンに登場するおいしそうな 鍋物(本当においしい。しかもアツアツ)は、すべてあたらしさんが劇場の裏 で用意してくれていたのだ。毎回、具にもこだわってくれていて、役者も実は 楽しみにしていたのだが、最終回の今回に限り、誰にも具をみせてくれない。


あたらし「ダメですよ、ダメダメ。誰にも教えられないの!」

と、かなりガードが固い。それはいいのだが、鍋を用意している場所がみんな の通り道なので、誰かが通るたびにあたらしさんは具の入った袋を持ってわざ わざ隠れに行ってしまう。最後には鍋までどこかに持って行ってしまった。ど こか秘密の場所で密かに煮込むつもりらしい。


そして、午後7時から最後のステージが始まった。 大きなミスもなく、舞台は最後のシーンへと進み、いよいよ鍋が登場。お客様 にはわからなかっただろうが、私たち役者の目は、鍋の具に集中されていた。
「いったい何が入っているんだ?」
「まさか闇鍋?」
「チョコレートなんか入ってるんじゃないだろうな。」
「あ〜ドキドキする。」

(以上、すべて私の想像による役者の心理描写である。)


期待と不安の渦巻く卓袱台(ちゃぶだい)周辺。ついに鍋の蓋が開けられ、中味 の全貌が明らかとなる瞬間がやってきた!待ち構えていた私たちの目の前に姿 を表わしたのは・・・・・・はまぐり。
「なぁんだ、普通やん。」
と思ったのは私だけだったのだろうか? しばしあっけにとられた後、さぁ食べようと鍋を探った私の前に残されていた のは、大きなはまぐりの殻だけだった。アドリブで「あれ?これの中味は!」 と言ったが、誰も答えてくれない。ただ、湯浅だけがいつも以上に焦って食べ ていたのを目撃した私は、心の中でつぶやいた。
「おまえか、私のはまぐりを取ったのは!」


なにはともあれ本番は無事終了。お疲れさまでした。