英国ウェストミンスター寺院のステンドグラスに銘板が入り、名実共に大作家の仲間入りをしたヴィクトリア朝の小説家エリザベス・ギャスケル。本書は、生誕200年を記念し、日本ギャスケル協会が3年あまりの準備期間を経て刊行したテーマ別論文集である。編集委員による査読を経た31編は、作品構造、人物、社会、フェミニズム、伝記、そして主題の6つの観点から、ギャスケルの人と文学を多角的に論じている。単なる作品論集と違う試みは、イギリス文学の伝統の中でこの作家をとらえようとしたところです。
新進、中堅、熟練の研究者が今後のギャスケル研究に一石を投じた論文集です。
ISBN 978-4-271-21000-9
目 次
* 注 記
* 序 文 鈴江璋子
* 第一部 物語る姿勢
第1章「リアリズム再考
―ギャスケルはオースティンの娘か?」松岡光治
第2章「本当は怖いギャスケル―ゴシック作品の特質」廣野由美子
第3章「『北と南』―「声」と「沈黙」のはざまで」猪熊恵子
第4章「『シルヴィアの恋人たち』における視線」齊木愛子
第5章「『妻たちと娘たち』の絶対解釈
―原作者の意図を探る」大野龍浩
* 第二部 人間関係の渦
第6章「ギャスケル、コリンズ、ディケンズの描く
オールド・メイドと女同士の絆」田中孝信
第7章「「母殺し」のプロットとギャスケル
―母のボイス、娘のボイス、そして女性のボイスを求めて」木村正子
第8章「ギャスケル作品における再婚の進化」武井暁子
第9章「父と娘の情景
―『暗い夜の事件』、『メアリ・バートン』、
『妻たちと娘たち』をめぐる一考察」中村美絵
第10章「『荒野の家』の二つの家族―ブラウン親子を中心に」直野裕子
第11章「父から娘に受け継がれるもの
―ギャスケル文学にみる父と娘の関係」宇田朋子
第12章「『ルース』におけるジマイマとファーカーの結婚」越川菜穂子
第13章「自然が救うギャスケルの男性たち
―『妻たちと娘たち』のロジャーを追いながら」栂 正行
* 第三部 社会を見る目
第14章「ギャスケルとメリトクラシー
―セルフ・ヘルプと進化論」波多野葉子
第15章「ギャスケルにとっての超自然現象」中村祥子
第16章「変化の記録者としてのギャスケル―変化の時代と女性」矢次 綾
第17章「『メアリ・バートン』にみるギャスケルの教育観」玉井史絵
第18章「理想の女性像
―初期の作品「ベッシーの家庭の悩み」を中心に」多比羅眞理子
* 第四部 フェミニズム
第19章「『ルース』におけるギャスケルのプロ作家としての責任」金丸千雪
第20章「マーガレットの到達点―父の意向を実践して」川上真巳子
第21章「『北と南』に見られる女性問題
―ヒロインの結婚への決意を通して」足立万寿子
第22章「『魔女ロイス』における史実とフィクション」木村晶子
* 第五部 伝記文学
第23章「ギャスケルのジャンル論
―十八、十九世紀の伝記に見る歴史記録と小説」宮丸裕二
第24章「ギャスケルが語らなかったもの
―『シャーロット・ブロンテの生涯』における手紙のトリック」芦澤久江
第25章「女のペンのポリティクス
―『シャーロット・ブロンテの生涯』」市川千恵子
第26章「『シャーロット・ブロンテの生涯』の争点を考える」松原典子
* 第六部 主題の共有と継承
第27章「批評史における社会問題小説家ギャスケルの誕生
―レイモンド・ウィリアムズとアーノルド・ケトル」閑田朋子
第28章「ユニテリアンであること――良心との葛藤」関口章子
第29章「ギャスケルのゴシック短篇における「身体」について」侘美真理
第30章「『北と南』とロマン主義時代の歴史小説」鈴木美津子
第31章「旅立ち、それぞれの居場所探し
―『妻たちと娘たち』における成長のバリエーション」松村豊子
* 跋 文 東郷秀光
* 執筆者紹介
* 編集委員紹介
* 索 引
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